DVD付きの豊竹咲大夫著「女殺油地獄考」を読んだ

 三浦しをんの「あやつられ文楽」を以前紹介しましたが、この中の「女殺油地獄」の章がとても気になってしまいました。そこで、豊竹咲大夫著の「女殺油地獄考」を読むことにしました。もっと詳しくわかることができるのでは、と思ったためです。この書籍、大判書籍ですが文字がとても大きいので、あっという間に読めます。文楽の「床本」(とこほん)を真似しているのかもしれません。近松門左衛門の名作「女殺油地獄」の全体像を把握したい方、ぜひお読みください。大夫の視点で書かれているのが興味深いところです。

 そしてこれを読むと、通しで「女殺油地獄」を観たくなると思います。付録のDVDは人形なしの語りのみの映像で、これが結構新鮮。巻末にはその「豊島屋油店の段」の床本もついていますので、「いっしょに語ってみたい文楽」的に楽しめるとおもいます。宴会芸で覚えるとヒーローになることまちがいないでしょう。

 さて内容は期待通りで、想定内の範囲。与兵衛がとんでもないやつだったということを再認識して安心した気分です。江戸時代の普通の庶民でも、いろいろな悪条件が重なることで殺人に行きついてしまうのでしょう。これは現代の殺人事件にも通じるものがあるのかもしれない、殺人事件も昔も今も一緒なのでは、とも考えさせられました。

 そして与兵衛がお吉を手にかけたのは衝動的なもの、とのことですが、それを読んで安心したような気がしましたが、やはり殺人ってよくわからないことが多いのだな、というのが正直な印象です。三浦しをんも、前述の著作で「殺人のもやもやを近松は文楽でうまく表現することに成功している」というようなことをたしか書いていましたが、そうかもしれません。すこしだけもやもやがすっきりしました。

国立劇場小劇場のパンフレット。ビギナーすぎてよく覚えていませんでした


 東京国立劇場小劇場では、平成26年5月の文楽公演で「徳庵堤の段」「河内屋内の段」「豊島屋油店の段」が演じられましたね。ビギナーのわたしもまさに観ていたのですが、そのころは過度のビギナーだったため、お吉が刺されて油にまみれてツーっとすべって逃げていることしか覚えていません。もったいない…。次回は、ぜひ通しで観られることに期待しましょう。

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