歌舞伎初心者向け! 「八月納涼歌舞伎(2017)」(第一部~第三部)オススメ度の星評価!


 好評の歌舞伎初心者向け、オススメ度の星評価表!!現在、東京・歌舞伎座で公演中の「八月納涼歌舞伎」の初心者向けのオススメ度表です。★が多いほど必見です。満点は★★★★★。
公演会場での「盛り上がり度」、「眠っている人度」、「口コミ度」などを総合的に判断しました。
★:オススメ、☆:イマイチ

<第一部>
★★★★☆(1)刺青奇偶(いれずみちょうはん)(11:00-12:30)
★★★★☆(2)玉兎(たまうさぎ)、団子売(だんごうり)(1:00-1:25)

<第二部>
★★★☆☆(3)修禅寺物語(2:15-3:13)
★★★★★(4)東海道中膝栗毛 歌舞伎座捕物帖(3:38-5:23)

<第三部>
☆☆☆☆☆(5)野田版 桜の森の満開の下 第一幕(6:30-7:45)
☆☆☆☆☆(6)野田版 桜の森の満開の下 第二幕(8:05-9:00)




【総評】
・総合点★★★☆☆
 総合点で三つ星。今月は三部制ですね。3等B席が3000円で観劇できるのは、ビギナーとしてはとてもありがたいことです。白星が二つあるのは、残念ながら第三部が歌舞伎初心者にはふさわしくないと判断したためです。

 また、今月は「歌舞伎十八番」のような「ザ歌舞伎」という演目がないため、ビギナーにはちょっと物足りないかも。一方で第二部の「東海道中膝栗毛」のようなドタバタ劇もありますので、夏休み気分として楽しめるかもしれません。第三部をのぞき、楽しませていただきました。

<8月13日の観劇結果です>
<第一部>
★★★★☆(1)刺青奇偶(いれずみちょうはん)(11:00-12:30)
 第一部は刺青奇偶(いれずみちょうはん)。博打好きな男と薄倖な女性との運命の物語を描いた新歌舞伎です。新歌舞伎なのですが、新作っぽいところはあまりなく、世話物としてとても楽しめるお芝居でした。ビギナーにもわかりやすくオススメです。

 それにしても「奇偶」を「ちょうはん」とはふつう読めないのですし、偶数が丁(ちょう)、奇数が半(はん)ですので、それも逆。その理由をイヤホンガイドでは「作家・長谷川伸のこだわり」というようなこと言っておりました。イヤホンガイドは手放せませんね。
 
 主役の博打打ち「半太郎」を中車さん、薄倖な女性「お仲」を七之助さんが演じていました。いや、七之助さんの妖しさといい薄倖ぶりといい、見とれてしまいました。切れ長の目が役にぴったり。中車さんは、新歌舞伎だとぴったりはまる好例かもしれません。

 冒頭、半太郎が大声で町人を怒鳴りつけるシーンがたびたびあるのですが、ふと、中車さん(香川照之)が昔出演していた中国映画「鬼が来た!」(2000年)で、世話をしてくれる中国人夫婦に罵声を浴びせる(本人は罵声と思っていたが実は「新年おめでとう」というお祝いの言葉)シーンを思い出してしまいました。それだけ中車さんらしい、ということです。

 お芝居は終始薄暗い中で進行しますので、途中うたた寝をしてしまうのではと心配でしたが、ストーリーがわかりやすく、進行も早かったので寝ることはありませんでした。周りを見渡しても寝ている人は少なかった印象です。お弁当食べる前ですし。

 お芝居の最後のほうで、政五郎役の染五郎さんが登場、より緊張した場面となりまして、中だるみもなく引き締まったお芝居になっている感じがしました。もう少し染五郎さんのお芝居を見てみたかった、というのは贅沢というものでしょうか。

 ぜひ、お仲を時蔵さん、半太郎を仁左衛門さんという配役で見てみたい、と思った次第でした。

★★★★☆(2)玉兎(たまうさぎ)、団子売(だんごうり)(1:00-1:25)
 玉兎(たまうさぎ)、いや、勘太郎ちゃんが可愛いかった。その一言に尽きます。しかし可愛いだけでなく踊りもしっかりしていました。動きもきびきびとして下座音楽と見事にシンクロしておりました。相当練習をしたのでしょう。とても楽しめましたよ。ありがとうございます。6歳でしょ?今後が楽しみです。ビギナー視点からすると、月をかたどった壁の舞台装置にも感動しましたし、子供が出演する歌舞伎演目として必見でしょう。

 次の団子売(だんごうり)は、お父さんの勘九郎さんと猿之助さんの登場です。踊りは言うまでもありません。安心して楽しませていただきました。演技中で一番驚いたのは、猿之助さんのウィンク! 客席上方にむかってウィンクしたのです! いや、驚いたというか、ぞくっとした……いえいえ、素晴らしいものを見させていただきました。

 今回の演奏は、玉兎が清元連中、団子売が義太夫連中(たしか……)と演奏者が違うということでしたが(イヤホンガイドで言っていました)、団子売の演奏がたしかにとても力強い! 文楽の義太夫がそのまま歌を歌っている感じで、元気が出ました!素晴らしい演奏ありがとうございました。

<第二部>
★★★☆☆(3)修禅寺物語(2:15-3:13)
 明治44年(1911年)に初演された新歌舞伎です。時代物ですが、新歌舞伎なのでとてもわかりやすいストーリーで楽しめました。この演目は「初世板東好太郎三十七回忌、二世板東吉弥十三回忌、追善狂言」ということでもあり、彌十郎さんプチオンステージ、という感じでしょうか。好太郎さんが彌十郎さんの父、吉弥さんが彌十郎さんの兄なのです。お盆時期ということもあり追善にぴったりですね。途中、動きが少なくて眠たい場面、まわりから寝息が聞こえてくる場面もありましたが、全体を通してあきることなく見ることができました。彌十郎さん、貫禄ありますよね。
 猿之助さん、勘九郎さん、巳之助さん、萬太郎さん、亀蔵さん、秀調さんと、豪華な脇役で安心して見られました。しかし、亀蔵さんを見るとやはり、以前演じていたピコ太郎を思い出してしまうのは、私だけでしょうか……。

★★★★★(4)東海道中膝栗毛 歌舞伎座捕物帖(3:38-5:23)
 一年に一度歌舞伎座で楽しめる「ドリフの全員集合!」です! いやあ楽しかった。ネタバレになりますので詳しくは書きませんが、とにかく楽しめました。劇中劇では「義経千本桜」をとりあげていて、ビギナーとしてはこの演目のエッセンスを楽しめるかもしれません。狐の衣装、手の動き、スッポンでの出入り。染五郎さん、猿之助さんの主役のほか、児太郎さん、勘九郎さん、巳之助さん、中車さん、隼人さんなどなど、みなさん楽しんでいるのが伝わってくるよい演目でした。
 昨年と比べたところでは、ちょっとドタバタ感が控えめだったような気もしました。昨年はラスベガスにいったり、噴水があがったりと、もうハチャメチャで楽しかったのですが、それに比べるとちょっとおとなしめだったかもしれませんが、大満足です。ありがとうございました。

 それにしても、児太郎さん、妖しい「化けもの」役がはまりすぎなんです。ここにもぜひご注目ください。

<第三部>
☆☆☆☆☆(5)野田版 桜の森の満開の下 第一幕(6:30-7:45)
☆☆☆☆☆(6)野田版 桜の森の満開の下 第二幕(8:05-9:00)
 野田秀樹作品です。評判となった「野田版 研辰の討たれ」から数えて4作目とのこと。
 歌舞伎ビギナーの私には理解不能でした。まったく意味がわかりませんでした。ストーリーらしいものは大枠把握できましたが、それでなにを伝えたいのかをくみ取ることはできませんでした。ビギナーのわたしは現代劇などを見たことがなく、その下地がないためでしょう。歌舞伎の延長として「観ようかな?」と思っている人は、混乱しますので「観ないこと」をオススメします。「歌舞伎俳優が出演している現代劇」という視点で、興味のあるかたはご覧ください。

 第一部で帰ろうかどうか迷いましたが、チケット代がもったいないため、我慢して第二部も観ました。いずれにせよ忍耐力が必要ですので覚悟ください。ビギナーのわたしのとなりでは妙齢の美人さんが観劇していたのですが、第一部の途中から頻繁に腕時計をちらちら。第二部にその席は空席になりました。幕間で通路にでると、「評判は聞いていたけど、やっぱり訳がわからないよね~」とニコニコ話ながら、二人の若い女性が去っていくのをみて、同じ事を思っている人がいる、と少し安心しました。マイナス印象ばかりで申し訳ございませんが、現代劇としてはおそらく優秀なのでしょう。
 
 一つ実感したのが、歌舞伎役者さんの演技力です。このような複雑な現代劇もそつなくこなす、歌舞伎役者さんたちの才能に感心しました。それにしても、勘九郎さん、ちょっと早口だったような気がしますが……。

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