渋い菊五郎!「四月大歌舞伎(2018)」(昼の部)オススメ度の星評価!


好評の歌舞伎初心者向け、オススメ度の星評価表!!現在、東京・歌舞伎座で公演中の「四月月大歌舞伎」(昼の部)の初心者向けのオススメ度表です。★が多いほど必見です。満点は★★★★★。公演会場での「盛り上がり度」、「眠っている人度」、「口コミ度」などを総合的に判断しました。★:オススメ、☆:イマイチ

<昼の部>
★☆☆☆☆(1)西郷と勝(11:00-12:09)
★★★☆☆(2)通し狂言 裏表先代萩 大場道益宅(12:39-1:13)
★★★☆☆(3)同上 足利家御殿・同床下(1:33-2:38)
★★★☆☆(4)同上 小助対決・仁木刃傷(2:53-3:50)





【総評】
・総合点★★★☆☆
 四月大歌舞伎昼の部のビギナー向けの星評価は三つ星としました。総合的には四つ星なのですが、一幕目の真山青果の「西郷と勝」は、歌舞伎を観ようと思っているビギナーには「はてなマーク」となるでしょうから、及第点の三つ星としました。つまり、歌舞伎ビギナーは一幕目は観なくてもよいかと思いました。もちろん、お芝居としては最高の演劇といえると思いますので、その点勘違いなきよう、よろしくお願いします。

 二幕目の「表裏先代萩」は「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」の裏バージョンとのこと。この表の「伽羅先代萩」は歌舞伎の有名な演目としてたびたび上演されますので、その予習として観劇してもよいと思います。ネズミがでてきて楽しいですし。





<4月14日(土)の観劇結果です>
★☆☆☆☆(1)西郷と勝(11:00-12:09)
 真山青果の現代劇、新歌舞伎です。タイトルの通り西郷隆盛と勝海舟が主人公で、セリフを楽しむ「セリフ劇」となっております。歌舞伎を観に行こうと、歌舞伎を観てみたい、と思っているビギナーにはお勧めいたしません。もちろんこれも立派な歌舞伎なのですが、ビギナーが思い描いているいわゆる歌舞伎、つまり、派手な化粧で見得を切る、という歌舞伎ではないためです。

 タイトルの「西郷と勝」を読むと、ほとんどの日本人は「このお芝居は、西郷隆盛と勝海舟の二人の話なのだな。江戸城の無血開城についてのお芝居かしら」と想像するでしょう。はい。ズバリその通りでした。「でも歌舞伎座で演じられるお芝居だから、なにかそれ以上のものがあるのだろう」と誰しも思います。しかし、ビギナーの筆者は残念ながらそれ以上のものを感じることができませんでした。贅沢ですが、もう一工夫が欲しいところです。しかし明治維新150周年の記念公演ということで最適なのかもしれませんね。ただ、会場のいたるところからいびきが聞こえてきて、こちらがハラハラいたしました。

 しかし演じている役者さんは贅沢です。松緑の西郷隆盛、錦之助の勝海舟、彦三郎の山岡鉄太郎。贅沢なセリフ劇です。歌舞伎役者さんの役者としての実力は、実はこのような新作歌舞伎で発揮されるのでは、といつも感心させられます。





★★★☆☆(2)通し狂言 裏表先代萩 大場道益宅(12:39-1:13)
★★★☆☆(3)同上 足利家御殿・同床下(1:33-2:38)
★★★☆☆(4)同上 小助対決・仁木刃傷(2:53-3:50)
 新作歌舞伎のあとは、「通し狂言 裏表先代萩」です。伝統的ないわゆる歌舞伎演目でして、ビギナーにオススメできるか、という視点からして三つ星としました。しかし、限りなく四つ星に近い三つ星となっています。歌舞伎の雰囲気を愉しみたい方、どうぞご覧ください。

 さて、ビギナーへのハードルは、そのストーリーの複雑さです。可愛い子供がでてきたと思ったら、毒入りお菓子を食べて殺されてしまったり、小さくて可愛いネズミがでてきたと思ったら、次に大きなネズミに変身して踏みつけられじたばたしてたり…と、あれよあれよという間にストーリーが展開します。しっかりと予習をしておかないとパニックになるか、熟睡となりますので、要注意です。

 お芝居の冒頭は、道益とお竹の楽しいやりとりから始まります。道益がお竹に好意をもっていて、なんとか気に入ろうとするのです。お竹が出てくると白塗りの顔がより白く見えました。それほど、自然な形でお芝居はスタートします。

 みどころは、花道をゆーっくりと下がっていく仁木弾正でしょう。菊五郎がまさに堂々と演じています。三等席からは花道奥が見えなくて残念ですが、すっぽんあたりからほんとうに時間をかけて、そして悪のオーラを発しながら花道を引っ込んでいきます。今月の夜の部、仁左衛門による大学之助と比べることができるのかもしれません。

 ビギナーのわたしが一番興味深かったのは、殺しの場面のBGMに流れる黒御簾音楽です。刀を振り回してばったばったと切り捨てていく場面の音楽として、黒御簾から長唄が流れるのですが、ゆったりとした三味線にのって男性が高い声を張り上げてあわせる音楽。なんていうのでしょうか。「立ち回りのだんまり」というか、殺しの凄惨な雰囲気をやわらげる効果があるのか(イヤホンガイドでもそのような説明をしていました)、とても不思議で、江戸の雰囲気を楽しめた感じがしました。

 配役は、菊五郎が小助と仁木弾正の二役。時蔵が政岡、孝太郎がお竹と沖の井の二役、ほかに、錦之助、松緑、團蔵、彦三郎、萬次郎などなど、贅沢な布陣です。ビギナーのわたしとしては、冒頭の團蔵のお竹に対するセクハラ演技がよかった。この部分がとても自然で、全体として芝居に集中することができました。みなさま、ありがとうございました。





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