好評の歌舞伎初心者向け、オススメ度の星評価表!!東京・国立劇場大劇場で公演中の「平成30年10月歌舞伎公演」の初心者向けのオススメ度表です。★が多いほど必見です。満点は★★★★★。公演会場での「盛り上がり度」、「眠っている人度」、「口コミ度」などを総合的に判断しました。★:オススメ、☆:イマイチ
★★★☆☆(1)通し狂言 平家女護島(へいけにょごのしま) 三幕四場
序 幕 六波羅清盛館の場
二幕目 鬼界ヶ島の場
三幕目 敷名の浦磯辺の場
同 御座船の場
【総評】
・総合点★★★☆☆
<10月8日の観劇記録です>
歌舞伎・文楽でよく演じられる有名な演目ですが、これを通し狂言で演じるというのが、さすが国立劇場! 渋すぎです。通常は二幕目の「鬼界ケ島の場」が繰り返し演じられますが、今回は通し狂言としてその前後のお芝居も楽しむことができます。しかし、なんと今年九月、歌舞伎座の秀山祭九月大歌舞伎の夜の部でも演じられています。ちょっとダブり感がありますよね。そのあたり、松竹さんと国立劇場さんで調整してほしところ!
さて、ビギナーとして、このお芝居を観るべきかどうか、という視点からすると、標準点の三つ星としました。ただし「これから歌舞伎と長くおつきあいしてこうかな……」と思っている人にとっては、五つ星、必見です。これからの楽しい「歌舞伎ライフ」で何度も観ることは確実ですので。ただ、歌舞伎の雰囲気を味わいたい、という人にとっては、ほどほどバラエティーに富んでいますので、楽しめます。ストーリーも複雑ではなく安心して観劇できるでしょう。
今回は、芝翫が清盛、俊寛と二役を演じます。いずれも主役にあたりますから、今月の国立劇場歌舞伎は「芝翫オンステージ」と言えるでしょう。橋之助から芝翫に襲名して2年(2016年10月、11月が襲名披露公演)。貫禄のある素晴らしい役者、芝翫を確認できるお芝居とも言えます。ビギナーの私は、橋之助時代は、浮名を流している印象でしたが、どっしりと安定感を増してきた感じがします。みなさま、いかがでしょうか。
まず序幕は、芝翫が清盛役で登場します。坊主頭の清盛も貫禄があります。そして二幕目が先ほども述べましたが一番有名な「鬼界ケ島の場」。
「もとよりも~、この島は鬼界ケ島と聞くなれば~、鬼あるところに~」とぶん回しの上から義太夫の語りからはじまります。このセリフは、ビギナーは覚えておきましょう。ちなみに、イヤホンガイドによるとこの鬼界ケ島は、現在の硫黄島のこととのことですよ。
そして、舞台上には疲れ果てた姿で、ぼろぎぬをまとった俊寛僧都(しゅっかんそうず)が現れます。演じるのはもちろん芝翫です。このとき、手に海藻を持って現れるのですが、イヤホンガイドによるとこの海藻は本物の海藻とのこと。わずかな磯の香りをかぐことで、芝居にリアリティーをだすため、というようなことを言っていました。このこだわりが素晴らしいですよね。
その俊寛のもとに、一緒に島流しになった丹波少将成経(たんばのしょうしょうなりつね)、平判官康頼(へいはんがんやすより)が近寄ります。歌舞伎座の場合、この二人はわらじを履いていて、近づいたときにわらじを端にきちんとそろえていましたが、今回の国立劇場版は最初から二人は裸足だった! ということに気づいてしまいました。すみません、ちょっとどうでもよいことでしたね!
さて、この幕のみどころは、最後の俊寛と瀬尾の立ち廻りと、舞台が海に見事に変わっていくさまでしょう。島に取り残された俊寛が、離れてゆく舟を見ている内に、花道から次第に舞台が海に変化していくのです。そうして、廻り舞台がまわり、最後には崖の上に俊寛が立ち尽くす、という場面です。大道具さんの面目躍起。とてもすばらしいお仕事をしてくれています。ありがとうございました。
そして最後の幕は、再び清盛の登場です。それも大きな御座船が舞台中央に登場します。頭が龍になっている、朱色が鮮やかな美しい景色が圧巻です。このとき、通常は黒色の黒衣(くろご)さんが、水色の着物をまとって、芝居進行をスムーズにしていきます。
最後は有王丸の立ち廻りで締めとなります。「タコ絞り」とよばれる放射線状の模様など、着物の柄も目に楽しいものでした。
配役は、橋之助、福之助のほか、孝太郎、板東亀蔵など渋い配役でした。みなさまありがとうございました。