お得な二演目!「十二月大歌舞伎」(第一部)オススメ度の星評価!


 好評の歌舞伎初心者向け、オススメ度の星評価表!!現在、東京・歌舞伎座で公演中の「十二月大歌舞伎」(第一部)の初心者向けのオススメ度表です。★が多いほど必見です。満点は★★★★★。公演会場での「盛り上がり度」、「眠っている人度」、「口コミ度」などを総合的に判断しました。★:オススメ、☆:イマイチ
今月は、「昼の部」「夜の部」の二部制ではなく、「第一部」「第二部」「第三部」の三部制です。

<第一部>
★★★★☆(1)源平布引滝 実盛物語(さねもりものがたり)(11:00-12:25)
★★★★☆(2)新古演劇十種の内 土蜘(つちぐも)(12:55-2:15)

【総評】
・総合点★★★★☆
 総合点で3に限りなく近い四つ星です。頻繁に演じられることが多い有名な二つの演目が上演されますので、ビギナーは必見です。ここで一度観ていると、あとから必ずまた観ることになりますので、その予習として観ておくことをお進めします。二つの演目とも長いんですが……。





<12月2日初日の観劇結果です>
<第一部>
★★★★☆(1)源平布引滝 実盛物語(さねもりものがたり)(11:00-12:25)
 有名な演目でビギナー必見です。ちょっと長くて眠たくなってしまうので星三つとしました。武士社会の忠義、親子の情愛が表現された好演目で、現代サラリーマン社会、現代家庭の親子関係にも通じる「なにか」を感じ取れる演目だと思います。人間関係は複雑(涙)。

 芝居後半は「その人が実は誰それだった」ということのオンパレードで、混乱してしまいます。しっかりと人間関係とストーリーを予習をしておきましょう。小道具や動物もでてきますので、見ていても楽しい。中盤でストーリーが停滞してちょっと眠たくなる、いや、たぶん寝てしまいますが、安心してください。後半に話が急展開しますので、ちょっとうたた寝しても影響ないでしょう。

 ストーリーはこんな感じです。源氏方の葵御前(あおいごぜん)をかくまっている百姓・九郎助の家から舞台は始まります。葵御前は懐妊しています。漁に出ていた九郎助と孫の太郎吉が家に帰ると、なんと持ち帰ってきた魚の籠の中に人の腕が入っています。なんでも、網にかかったところを太郎吉が見つけたとのこと。その腕は女の腕のようで、白旗を握っています。

 そんなところに、葵御前の懐妊をかぎつけた、平家方の実盛(さねもり)と瀬尾(せのお)がやってきて、産んだ子供を出せと言います。そこで、九郎助は「葵御前が産んだのは女の腕だ」といって太郎吉が拾ってきた女のその腕を出します。瀬野は信じませんが、実盛はそんなもともあるだろうと瀬野を説得します。実は実盛は、いまは平家方ですが、源氏方を応援しているのです。

 そうして瀬尾がいなくなると、実盛は、その腕を切り落としたのは自分だとその様子を語り出します。そしてそれは、太郎吉の母・お万の腕だと言うこともわかりました。太郎吉は泣きじゃくります。そのような最中に、腕のない死体が九郎助の家に運ばれてきました。それはお万です。その腕のないお万の死体に、太郎吉が拾ってきた腕をつなげると、あーら不思議、お万がよみがえるじゃありませんか。しかし、それもつかの間。白旗が源氏方に渡ったのを確認すると、お万はまた死んでしまいます。

 そうして瀬尾がやってくると、実盛や九郎助が源氏の味方をしているのがわかったので、実盛や九郎助たちを斬ろうとします。子供の太郎吉も槍を手にして瀬尾と対峙します。すると、瀬尾はなんと太郎吉が構えている槍を自らに突き刺して自害しようとします。それは、実は、お万は瀬尾の娘であり、つまり、太郎吉は瀬尾の孫。つまり、瀬尾は自分の孫の太郎吉に手柄を与えたくて、太郎吉が敵を討ったようにみせかけたのでした。

 そうして最期に実盛は馬にのって戦にむかうのでした…。というような内容だったと思います。




 1時間20分の長いお芝居です。配役は実盛を愛之助、葵御前を笑太郎、瀬尾十郎を片岡亀蔵、お万を門之助、九郎助を松之助、九郎助の妻小よしを吉弥が演じています。愛之助はズバリ格好いい! 初日に観劇しましたが、若緑色のステキな着物を着た藤原紀香さんが入り口でお客さんに挨拶していました。それにしても、愛之助のマスク、仁左衛門にとても似てきた気がしました。血はつながっていないのに。歌舞伎役者としては最高の二枚目ですね。安定した配役で安心して観られました。しかし、実は九郎助役の松之助の安定した演技がこの演目の肝のような気もしました。みなさま、ありがとうございました。

 ストーリーは複雑ですが、見ていて楽しい演目かもしれません。首がごろりところがったり、子供役の太郎吉が元気よく演技していたり、と歌舞伎らしい場面を楽しめます。馬がリズムに乗ってパカパカ足踏みするところなんて、新鮮でした。イヤホンガイドによると、太郎吉は大きくなると、手塚太郎光盛(てづかのたろうみつもり)という実在の人物になるとのことで、これがなんと漫画家の手塚治虫の祖先なんですって。ためになりますね。イヤホンガイドはやめられません。




★★★★☆(2)新古演劇十種の内 土蜘(つちぐも)(河竹黙阿弥作)(12:55-2:15)
 この演目は松羽目物(まつばめもの)といわれる種類の歌舞伎です。能を歌舞伎に取り入れた演目で、舞台が能舞台のようになっています。「勧進帳」もこんな感じですので、「これが歌舞伎の舞台のデフォルト」と思っている人もいるかもしれませんが、それは大間違いですから。松羽目物の代表作として、四つ星としました。

 さて、この土蜘(つちぐも)はこんなストーリーです。病気になった源頼光(よりみつ)のところに、家臣の平井保昌(やすまさ)が見舞いにきます。そのあとに薬を届けに侍女胡蝶が現れます。そして胡蝶は紅葉が素晴らしい各地の名所の様子を語ったのちに去っていきます。すると頼光は病で苦しみ出しますが、すると、智籌(ちちゅう)と名乗る僧侶が現れます。その智籌は実は魔物。蜘(くも)の魔物です。その魔物を退治するために頼光は対決するのでした…。おおざっぱですみません。




 おもな配役は、松緑が智籌、彦三郎が頼光、梅枝が胡蝶を演じています。ビギナーのわたしのご贔屓は松緑さんですので、とても楽しめました。松緑さんは、普段着がヒップホップ風で、とてもおしゃれな眼鏡を愛用しているのですよ。

 荘厳な雰囲気の舞台をバックに、カタシャギリ(片しゃぎり)という下座音楽が流れます。歌舞伎独特のとても贅沢で心地よい瞬間を楽しめると思います。しかし松羽目物なので、舞台はずっと最後までいっしょ。ここで油断すると知らないうちに安らかな眠りに落ちてしまいます。ビギナーはギュッと目を見開いて、持ちこたえてください。しばらく動きの少ない場面が続きますが、しばらくすると、袴姿の4人が現れて、智籌とともに舞を舞います。この4人は「四天王」で、緑、青、紫、赤の袴を着ています。彼らの袴はとっても角張っていて「レゴ人形」のようにも見えました。

 しばらくすると智籌が蜘に変身するのですが、茶色い顔に隈取りバリバリで、「ザ・歌舞伎」を堪能できるでしょう。外国の方も楽しめること間違いありません。この演目、後半は飽きないのですが、やはり前半は眠ってしまう可能性大。しかし、前半で眠っても後半の土蜘が本性を現すところさえ観られれば、ビギナーとしては及第点です。土蜘の豪快な動きを是非楽しんでいただきたいと思います。松緑さん、堪能させていただきました。ありがとうございました。




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▼第三部の報告はこちら

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