夏祭浪花鑑は必見!「六月大歌舞伎(2018)」(夜の部)オススメ度の星評価!


 好評の歌舞伎初心者向け、オススメ度の星評価表!!現在、東京・歌舞伎座で公演中の「六月大歌舞伎」(夜の部)の初心者向けのオススメ度表です。★が多いほど必見です。満点は★★★★★。公演会場での「盛り上がり度」、「眠っている人度」、「口コミ度」などを総合的に判断しました。★:オススメ、☆:イマイチ

<夜の部>
★★★☆☆(1)夏祭浪花鑑 鳥居前(4:30-5:14)
★★★★☆(2)夏祭浪花鑑 三婦内・長町裏(5:29-6:55)
★★★★☆(3)巷談宵宮雨(7:25-9:10)




【総評】
・総合点★★★☆☆
 六月大歌舞伎のビギナー向け星評価は三つ星の標準点です。必見かと言われれば迷いますが、一幕目「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」は、ビギナーとしては見ておいた方がよいでしょう。歌舞伎の有名な義太夫狂言、つまり文楽をルーツにした演目の一つです。国立劇場9月文楽公演でも公演されますので、歌舞伎と文楽の表現の違いを理解するにも見ておいた方がよいかもしれません。二幕目の「巷談宵宮雨(こうだんよみやのあめ)」は、ズバリ怪談です。気味の悪い話ですが、気味悪さをおさえめにした演出となっております。内容もわかりやすく予習なしでも楽しめるでしょう。
 一幕目の見どころが最後の九郎兵衛の「殺し場」、二幕目も龍達がたたってでる場面など、今月の夜の部は八月納涼歌舞伎のような演目で、涼しくなりますよ。



<6月2日初日の観劇記録です>
★★★☆☆(1)夏祭浪花鑑 鳥居前(4:30-5:14)
★★★★☆(2)夏祭浪花鑑 三婦内・長町裏(5:29-6:55)
 二幕とも見る余裕のないかたは、ぜひ二幕目をご覧いただきたい。最後の場面の殺し場は「歌舞伎の様式美」を表現する典型的なお芝居となっています。でも、よく「歌舞伎の様式美」とはいったいなんなんでしょうか。ビギナーのわたしもよくわからないのですが、ゆったりとポーズを決めながら動作する、それがとても美しく決まるから、このように表現することなのだと思っています。見ていてゆったりとして、不思議な世界が表現されています。暗闇でゆったりと繰り広げられる「だんまり」はその極みですね。ビギナーでだんまりを観たことのないかたは、ぜひご覧いただきたい。この演目ではありませんが。

 さて見どころは殺人のシーンです。それが延々とゆっくりと演じられるのはまさに「不条理な時間 鮮烈」(朝日新聞6月7日夕刊)ですね。ほんとうに長い間、ゆっくりと殺人しているのです。それを観客衆が固唾を飲んで観ている。ある意味、現代の不条理はここにあると言えるかもしれません。みなさん、この不条理をどうぞお楽しみください。

 この不条理を演出しているのは、九郎兵衛役の菊五郎。そして、陰の主役が、九郎兵衛に殺される橘三郎。この二人の演技が自然で、いわゆる「歌舞伎」の世界を表現しています。タイトルが祭りなのに、殺人事件がメインのシーンというのが、対比を際立たせています。荒事のような派手な歌舞伎のほうがビギナーは目で楽しめるので、わかりやすいですが、この不条理な世界を理解できるようになると、歌舞伎ビギナー卒業なのかもしれませんね。

 ほか、熱演していたのがお辰役の雀右衛門。最近あまり出番がなかったような気がしますが、六月大歌舞伎は大活躍です。自分の顔を熱した鉄で傷つける難しい役どころですが、とても自然に見入ることができました。雀右衛門さんも芝雀から完全脱却、油がのってきたようで頼もしくなってきて、ひいきとしてはうれしい限りです。

 ほかに、錦之助、菊之助、松江、種之助、そして菊之助の息子、菊五郎の孫である寺島和史と、とても贅沢な配役でした。団七縞(だんしちじま)という着物も美しく、「播磨屋」とオレンジ色で描かれた菊五郎の着物も美しいモノです。みどころ満載なお芝居をどうぞお楽しみください。



★★★★☆(3)巷談宵宮雨(7:25-9:10)
 六月大歌舞伎夜の部の最後は、巷談宵宮雨。「こうだんよみやのあめ」と読みます。脚本家・宇野信夫の新作歌舞伎です。ストーリーはとてもシンプル。ビギナーは予習なしでも楽しめるでしょう。ビギナーからすると「隈取り」や「見得」などありませんから、「これが歌舞伎?」と思うかもしれません。内容がとてもわかりやすいですので、これも歌舞伎というよい例かもしれません。

 とにかく気味が悪い。龍達役の芝翫が妖しい老人、中年を好演しています。松竹歌舞伎会の会報「ほうおう」の芝翫インタビューにもありましたが、この役は昔から演じたかった役らしいです。不潔そうな龍達が体をかきむしるシーンは、ほんとうにかゆそうに見えました。とくに手の指の間をかくシーン。ほんとうにこっちもかゆくなりました。いや、芝翫さんにやられました。

 ほか、このお芝居で注目すべきは、雀右衛門です!いつも女形できれいなおしろいの顔の雀右衛門さんが、薄化粧なのに驚愕しました。とても違和感有り。しかし、それなのに年増を好演しておりました。「こんなおばさん、近所にいるいる!」という感じで、感服です。雀右衛門さん、とてもすばらしい演技をありがとうございました。

 あとは、悪役の松緑。ネズミ捕りで龍達を毒殺するのですが、木訥とした悪役のようで、しっくりきていました。いや、一番驚いたのは松緑の脚の長さ!すらりとした脚が着物から出ていまして、ちょっと驚きました。いつもは着物で隠れていますからね。

 ほか、松江が早桶の前でごろんと寝そべっているのも、夏の夜のけだるさをうまく演出していました。気味が悪いお話しですので、夏の夜にもう一度観てみたいと思いました。みなさま、ありがとうございました。



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