玉三郎のセンスに感動!「秀山祭九月大歌舞伎(2018)」(夜の部)初心者向けオススメ度の星評価!


 好評の歌舞伎初心者向け、オススメ度の星評価表!!現在東京・歌舞伎座で公演されている「秀山祭九月大歌舞伎」(夜の部)の初心者向けのオススメ度表です。★が多いほど必見です。満点は★★★★★。公演会場での「盛り上がり度」、「眠っている人度」、「口コミ度」などを総合的に判断しました。★:オススメ、☆:イマイチ

<夜の部>
★★★★☆(1)松寿操り三番叟(4:30-4:48)
★★★☆☆(2)平家女護島 俊寛(5:08-6:25)
★★★★★(3)新作歌舞伎舞踊 幽玄 羽衣(7:00-7:44)
★★★★★(4)新作歌舞伎舞踊 幽玄 石橋・道成寺(8:04-8:58)




【総評】
・総合点★★★★☆
 平成最後の秀山祭九月大歌舞伎「夜の部」は、「舞踊モノ」「伝統的な歌舞伎」「新作歌舞伎」を楽しめるとてもお得な演目です。ビギナーが見るべきかどうかという視点から判断して四つ星といたしました。絶対に観た方が良いというお芝居だということです。そして、今回はイヤホンガイドは絶対に借りなければいけません。最後の幽玄はイヤホンガイドがあってこそ、踊りがとても理解できますから。

 所作事(しょさごと)は三番叟(さんばそう)という、歌舞伎の世界ではデフォルトの舞踊モノですので、ビギナーはぜひこの機会に三番叟に触れておくべきです。俊寛は、近松門左衛門の作品で、これまた超有名演目です。これから歌舞伎を観ようと思う人はたびたび目にすると思います。そして、最後の新作歌舞伎「幽玄」。新作歌舞伎といって、ワンピース歌舞伎やNARUTOなどいろいろとありますが、これこそ新作歌舞伎の正統派ではないでしょうか。ビギナーは絶対にチェックすべきです。



<9月8日の観劇記録です>
★★★★☆(1)松寿操り三番叟(4:30-4:48)
 「まつのことぶきあやつりさんばそう」と読みます。いわゆる「三番叟(さんばそう)もの」ですが、とても楽しい。操り人形が三番叟を踊るという所作事で、イヤホンガイドによると幸四郎は「これはパントマイムだ!」と感動して、自身もとても気に入っている演目とのことですよ。楽しそうに演じているのがこちらにも伝わってきます。

 舞台は御簾の中から流れる「片しゃぎり」というBGMとともにスタート。舞台上は、松羽目ものと呼ばれる能の舞台を模した場面となっています。その後、長唄のお囃子連中の楽しそうな音楽となり踊りが始まります。箱の中には操り人形に扮した三番叟こと幸四郎が眠っていますが、それをハコからひっぱりだして天井からひもで操作する、という演出になります。後見の吉之丞と幸四郎の息のあった芸がみどころです。ほんとうに糸をあやつっているように見えるのですから。

 見どころはすべてですが、とくにあげるとすれば、くるくると自由に回り続ける幸四郎の踊りです。バレーの回転のように、華麗に回り続けると会場からは拍手がわき上がっていました。最後には鏑鈴(かぶらすず)という、小さな鈴をもっての踊りです。

 それにしても、芝居上、結構頻繁に糸がからまるんですよね、そのからまった糸をほどくシーンなど、とても芸が細かいのですが、見入ってしまうほど巧妙で、会場からはため息が出ていました。みなさま、すばらしいお芝居をありがとうございました。





★★★☆☆(2)平家女護島 俊寛(5:08-6:25)
 歌舞伎の代表的な演目である「俊寛(しゅんかん)」です。近松門左衛門の作品で、イヤホンガイドによると、人間の本音と建前を表現したお芝居とのことです。

 舞台は浅葱幕(あさぎまく)でスタート。このお芝居はもともとは人形浄瑠璃がルーツのため、ぶん回しとよばれる舞台上手(かみて)の演奏台の上で、義太夫(ストーリーを語る人)と竹本(三味線を演奏する人)がBGMを奏でるお芝居です。「もとよりも、この島は鬼界ケ島と聞くなれば~」という有名なセリフでお芝居はスタートします。

 ストーリーは、そんなに難しくありません。登場人物も多くないので混乱することはないと思いますが、ビギナーはきちんと予習しておきましょう。島流しにあった俊寛が島で生活をしていると、一緒に島流しにあった少将が島の娘に恋をしました。そしてしばらくすると赦免の迎えの舟が来ます。少将はその好きになった娘と一緒に帰ろうと思ったところ、舟には娘を乗せる余裕がないことがわかります。すると俊寛は、その娘を舟に乗せて自分は島に残る、という話です。これだけだと、とても単純なストーリーなのですが、単純なだけにいろいろと考えさせられるお芝居とも言えます。

 イヤホンガイドでは、「近松門左衛門が人間の建前と本音を見事に表現した名作」と鼻息荒く話していましたが、最後の島野取り残されるシーンは、そういう点を抑えると見どころがあって楽しめるでしょう。主役の吉右衛門がまさにこの感情劇をつとめあげています。

 有名な演目名だけにいろいろと有名なセリフもあるのですが、ビギナーは「鬼界が島に鬼はなく、鬼は都にぞいる」「思い切っても凡夫心(ぼんぷしん)」というセリフを覚えておくと、人生役に立つことがあるはずです。たとえば、思いきって決断したけど、そのことを後悔するときのことを後者は意味しています。

 このお芝居で興味深かったのは、その礼儀のよさ。島での荒々しい生活にもかかわらず、俊寛にあいにきた手下が、きちんと草履を脱いで近くによっていき、その草履を黒衣が片付けているさまに、歌舞伎の、いや日本芸能の極意を観た気がしました。

 また鍋代わりにしているおおきなアワビの貝殻に、俊寛が昆布らしきものをいれて料理をするところに、いったいなにを作るのだろう、と興味がわきました。彩りとしては、雀右衛門が演じた千鳥の緑の着物が舞台に映えていました。帯はピンクなんですよ。江戸時代の色彩感覚に感服いたします。

 そして、最後に舞台は回転して岩場に残された俊寛がひとりクローズアップされる場面となります。しばらく眠っていてもこの場面だけは頑張って起きて観ましょう。大道具さんの面目躍起ですね。みなさま、よいお仕事ありがとうございました。



★★★★★(3)新作歌舞伎舞踊 幽玄 羽衣(7:00-7:44)
★★★★★(4)新作歌舞伎舞踊 幽玄 石橋・道成寺(8:04-8:58)
 玉三郎の演技はもとより、鼓童によるスティーブ・ライヒばりの演奏にたまげました。次回は、ぜひ、スティーブ・ライヒと競演してほしい!と思うほどの素晴らしい新作歌舞伎です。

 舞台は総勢14名の和太鼓集団、鼓童が音楽を奏で、それに併せて玉三郎が舞踊を舞うという演目です。「和太鼓」というと、お祭りに櫓にある、大きくて太いバチにたたかれる大きな太鼓が主役かと思ったのですが、そうではなく、小さな小太鼓がシンクロしてとても不思議な雰囲気、素晴らしい雰囲気を醸し出しています。

 さらに、半裸の衣装で荒々しく太鼓を演奏するのかというと、まったくそんなことはなく、みなさんとてもイケメン!その方たちが、裃や和服を着ているのがとても新鮮です。歌舞伎の舞台で半裸の若者が荒々しく和太鼓を叩くなど、ちょっと違うのではと想像していたので、杞憂に終わって安心しました。

 その小太鼓で音楽の機微を表現するのが、本当に素晴らしい。音だけではなく、舞台もシンプルながら趣向がこらされていて、本当にすばらしい空間を作り出しています。太鼓のシンコペーションやユニゾンを聴くと、バリ島のガムランやケチャックを思い出させます。アジアの伝統が根底に流れているのでは、などなどいろいろと本当に考えさせられて、かつ、とても心地よいのです。

 演目は、歌舞伎の代表的な舞踊の「羽衣」「石橋(しゃっきょう)」「道成寺(どうじょうじ)」とビギナーにはうれしい演目です。演じるのは玉三郎のほか、歌昇、萬太郎、種之助などなどフレッシュな面々。

 石橋(しゃっきょう)では、毛振りと和太鼓シンクロに感激。いや、この組み合わせはとても素晴らしく、究極の毛振りだと断言できます。ぜひ、2020東京五輪の開幕式で実現してほしい!

 道成寺では、玉三郎が鬼に変化するのですが、いや、玉三郎の鬼って、顔がこわい!玉三郎の悪女がピンとこないだけに、新鮮でした。

 そして道成寺の最後は、いつもの普通の演目の最後の音楽「ドタドタドタドッタドッタンドン(太鼓) ピー(笛)」の最後の音楽で、これを鼓童が演じるなんて、超贅沢!

 すみません、興奮しすぎてうまく表現できませんが、ぜひみなさん幕見でもよいのでご覧いだき、この感動を分かち合っていただきたいと思います。




執筆中



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