これぞ歌舞伎!「秀山祭九月大歌舞伎(2018)」(昼の部)初心者向けオススメ度の星評価!


 好評の歌舞伎初心者向け、オススメ度の星評価表!!現在東京・歌舞伎座で公演されている「秀山祭九月大歌舞伎」(昼の部)の初心者向けのオススメ度表です。★が多いほど必見です。満点は★★★★★。公演会場での「盛り上がり度」、「眠っている人度」、「口コミ度」などを総合的に判断しました。★:オススメ、☆:イマイチ

<昼の部>
★★★★☆(1)祇園祭礼信仰記 金閣寺(11:00-12:39)
★★★☆☆(2)鬼揃紅葉狩(1:09-2:03)
★★★☆☆(3)天衣紛上野初花 河内山(2:18-3:53)




【総評】
・総合点★★★★☆
 2018年の秀山祭九月大歌舞伎「昼の部」は、歌舞伎の超有名演目「金閣寺」と「河内山」が演じられていますので、ビギナーとしては絶対に観るべき演目として四つ星としました。これから歌舞伎の世界に入ろうかな、と思っている人は必ずと言って良いほど何度も観ることになる演目です。この機会に観劇しておきましょう。ほか、舞踊モノでは、幸四郎が珍しく女形を演じていますので、これも要チェック。

 お芝居は二つともちょっと眠たくなり、ビギナーとしては結構しんどいかもしれませんが、眠っても全然オッケー。だって、歌舞伎ですから! 途中眠たくなってしまうという点もふくめ、今月の昼の部はまさに歌舞伎のエキスが詰まった演目揃いとも言えますので、ビギナーのみなさんはぜひチェックしましょう。一方、中級の歌舞伎ファンには安定した演目ではないでしょうか。ご満足いただけると思います。




<9月9日の観劇記録です>
★★★★☆(1)祇園祭礼信仰記 金閣寺(11:00-12:39)
 秀山祭九月大歌舞伎は、歌舞伎の超有名演目「祇園祭礼信仰記 金閣寺」で幕開けです。「金閣寺」と呼ばれていますね。この演目はほんとうに有名で、DVDなど様々な形で映像が残っています。図書館などにもおそらくあるでしょう。歌舞伎に興味をもってこれからちょっと観てみようかな、と思う人もこれからたびたび目にすることになる演目ですので、心して観劇しましょう。

 端的にまとめると、人質となって幽閉された雪姫をめぐる物語です。全体のストーリーは複雑度でいうと偏差値55ぐらいでしょうか。しっかりと予習して、悪者と善玉の区別、どうして雪姫が幽閉されてしまうかを把握しておきましょう。

 しかし、ビギナーはおそらく冒頭から眠ってしまうでしょう。だって、冒頭から双方が舞台上で碁を打っているのですから。寝ても仕方ないですが、終盤の雪姫が足先でネズミを描こうとしているシーン「爪先鼠(つまさきねずみ)」からはしっかりと目を開けて観るようにしましょう。降ってくる花びらの量がパナイですし!

 舞台は「そもそも金閣と申すは~、鹿苑院の義満公~」という義太夫のセリフから始まります。このお芝居は義太夫物、丸本物とよばれる、ルーツを人形浄瑠璃(文楽)にもつお芝居なので、ぶん回しがセリフを語る場面からスタートします。これがお経のように眠りを誘いますので、最初ぐらいは目に力をこめて舞台を凝視いたしましょう。

 凝視した舞台上では、大膳が藤太(だと思います)と碁を打っています。ぼーっとしていると眠りそうなので碁盤をオペラグラスで覗いてみましょう。なんと双方が本当に碁を打っているのです。そして、碁を打ち終わると藤太が碁石を片付けるのですが、それがきちんと黒石、白石をわけて碁笥(ごけ。碁石のいれもの)に納めているのに感心しました。いや、歌舞伎というのは本当に芸が細かい!ところで、そんなふうに、眠たくなると舞台上の出来事や物(小道具)に集中すると眠らないですから、ビギナーのみなさん、どうぞお試し下さい。

 このお芝居のヒロインは幽閉される雪姫。児太郎が演じています。児太郎って背が高くてけっこうガタイがよいのですが、女性を演じると美しいのですよね。そのギャップが新鮮で大ファンです。いつもよいお芝居、ありがとうございます。この雪姫は、歌舞伎の「三姫(さんひめ)」の一つに数えられていまして、ほかの「2姫」は、「鎌倉三代記(かまくらさんだいき)」の時姫(ときひめ)、「本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)」八重垣姫(やえがきひめ)となります。ビギナーは、この三姫はこれから何度も観ることになりますので暗記しておきましょう。

 今回は雪姫を児太郎が演じていますが、ほか大膳に松緑、藤太に亀蔵と中堅が担当し、安定感を醸し出しています。立ち廻りの御簾音楽が軽快で滑稽でとても楽しめます。

 そうして最後に福助の登場です。「脳梗塞による筋力低下」(朝日新聞によると)でしばらく舞台から遠ざかっていましたが、5年ぶりの登場とのこと。慶寿院の尼役で登場すると会場からは拍手の嵐。しっかりとした口調でセリフを言っていました。病気になる前は、女ったらしのイメージだった福助で評判が良くない面もあったのかもしれませんが、会場のみなさんはその復活を心から祝っているのが伝わってきました。ただ、右手が動いていなかったので、右半身に後遺症が残っているのかもしれませんね。

福助の復活劇が記憶に残る平成最後の「金閣寺」は、ビギナーにかぎらず、歌舞伎ファンのみなさんに満足いただける舞台でしょう。みなさま、すばらしいお芝居、ありがとうございました。




★★★☆☆(2)鬼揃紅葉狩(1:09-2:03)
 二幕目は舞踊劇です。「おにぞろいもみじがり」と読みます。歌舞伎の典型的な舞踊劇、踊りですので、ビギナーとしては歌舞伎舞踊の良い例としてご覧ください。ストーリーは姫たちが鬼女にかわるという内容ですが、舞踊モノはストーリーなんてきにぜず、その動きや衣装の美しさを楽しみましょう。

 冒頭は、常磐津と竹本の掛け合いで幕開けです。賑やかな感じでよいですよね。出演は鬼女役の幸四郎のほか、錦之助、廣太郎、児太郎、高麗蔵、米吉、宗之助、隼人などなど、若手がメインですが、東蔵というベテランも参加しています。

 注目はその色彩です。オレンジ、黄色、ピンク、緑の着物を着た女形が毛振りをする姿は美しい。それだけ楽しめればビギナーとしては十分でしょう。

 あと、幸四郎の女形(おやま)って、結構声が男のままで「プッ」と笑ってしまいました。新宿二丁目あたりにいる女性(男性)っぽい声だったりして。でも容姿は美しいですから、そのギャップを楽しんでもよいかもしれません。みなさますばらしいお芝居、ありがとうございました。



★★★☆☆(3)天衣紛上野初花 河内山(2:18-3:53)
 有名な「河内山(こうちやま)」です。お坊さんに化けた河内山宗俊(こうちやまむねとし)が、お金をだましとって去っていく、というお話しです。ストーリーは難しくありませんが、ビギナーにとっての難敵は「眠さ」でしょう。冒頭から舞台上でのセリフのやりとりがしばらく続くので、ビギナーは絶対に寝てしまうでしょう。まわりを見渡すと「即ご入眠」の方々がたくさん見受けられました。でも、いいんです。寝ても。最後の有名なセリフの部分まで、そおっとしておきましょう。

 イヤホンガイドによると、このお芝居の舞台は、秋葉原と御徒町の間ぐらいなんですって。このように身近な地名を聞くことで、ぐっとお芝居が身近に感じますよね。イヤホンガイドはやはり手放せません。

 ほか、イヤホンガイドによると面白い昔の言葉をいろいろと説明していました。「煎り花に豆」は「枯れ木に花」という意味だそうですよ。あと、これは一幕目ですが、「一分試し(いちぶだめし)」は「ズダズダに斬る」という意味なんですって。

 このお芝居の見どころは、河内山宗俊が着ているオレンジのお坊さんの衣装と、その有名名セリフです。帰り際に玄関で「馬鹿め!」と叫んで、幕となるシーンが一番有名です。今回は、宗俊を中村家のお家芸として中村吉右衛門が演じています。吉右衛門は、本当に安定してすばらしい。

 吉右衛門が演じると、俊寛もそうですが、どんなお芝居でもぴったりとはまるのです。ビギナーのわたしは、吉右衛門が演じる「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)」の佐野次郎左衛門が大好きです。ぜひ近々観てみたい。

 この「河内山」、最近では2015年11月の吉例顔見世大歌舞伎で海老蔵が演じていました。オレンジの衣装に海老蔵が映えていましたが、ビギナーのわたしの印象としては、最後の「馬鹿め!」は、吉右衛門のほうがぴったりと思いました。みなさんはいかがでしょうか。素晴らしいおしばいありがとうございました。



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