「三人吉三」で歌舞伎の雰囲気を!「芸術祭十月大歌舞伎(2018)」(昼の部)初心者向けオススメ度の星評価!


 好評の歌舞伎初心者向け、オススメ度の星評価表!!現在東京・歌舞伎座で公演されている「芸術祭十月大歌舞伎」(昼の部)の初心者向けのオススメ度表です。★が多いほど必見です。満点は★★★★★。公演会場での「盛り上がり度」、「眠っている人度」、「口コミ度」などを総合的に判断しました。★:オススメ、☆:イマイチ

<昼の部>
★★★★☆(1)三人吉三巴白浪(11:00-11:27)
★★★☆☆(2)大江山酒呑童子(11:47-12:44)
★★☆☆☆(3)東山桜荘子 佐倉義民伝(1:19-2:53)




【総評】
・総合点★★★☆☆
 芸術祭十月大歌舞伎「昼の部」のビギナー向けのオススメ度の星評価は、三つ星。偏差値55くらいで、観ても観なくてもよいかな。しかし、一幕目の「三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)」は有名な演目ですので観て欲しいところです。約30分と短いですし。
 二幕目の「大江山酒呑童子(しゅてんどうじ)」は勘九郎が楽しそうに踊っています。ちょっと長いのですが楽しい舞踊モノです。三幕目の「佐倉義民伝(さくらぎみんでん)」は、辛口ですが二つ星としました。これはちょっと長くてストーリーの展開が遅い印象。もちろん白鸚は好演しておりました。まわりを見渡すと、眠っている方も多数いらっしゃいましたが、これも歌舞伎、という良い例かもしれませんね。楽しいお芝居ありがとうございました。



【演目ごとの講評】
<10月13日の観劇記録です>
★★★★☆(1)三人吉三巴白浪(11:00-11:27)
 通称「三人吉三(さんにんきちさ)」と呼ばれる、有名な演目です。歌舞伎ビギナーとしては必見です。四つ星としました。今回は、七之助がお嬢吉三、巳之助がお坊吉三、獅童が和尚吉三を演じるという、超豪華な面々です。これからの歌舞伎界を引っ張って行くであろう3人を知るよい機会でもありますね。また、このお芝居で重要な役を演じる夜鷹(よたか)は、鶴松が演じています。とても重要な役ですが安定した演技で、まさに縁の下の力持ちという役回りでしょう。

 さて、お芝居は川、そしてその川べりの石段が形作られた灰色の舞台で幕開けです。夜鷹役の鶴松が花道から登場します。顔を手ぬぐいでかくし、丸めたござを背負っています。この「夜鷹」。みなさんご存じでしょうか。当時の江戸時代の最下層にいる人々とも言われる売春婦です。街の暗がりの辻に立ってお客を呼び寄せる職業の女性です。なんでも、ものすごく年をとった女性から、梅毒で鼻がなくなった人までもいたという記録もあるそうです。そのため、夜鷹は大きめの手ぬぐいをかぶり、それを口にくわえて顔を隠していたそうですよ。という話をビギナーのわたしは、山本一力の小説を通して知りました。



 そのような灰色の舞台上に、かごに乗って巳之助演じるお坊吉三が登場します(たしか…)。芝居自体は動きがなく、ビギナーはいきなりの睡魔に襲われるかもしれません。注意してください。そのようなときは舞台装置に注意をこらして観てみると、案外寝ないで観られるものですよ。川の模様や、石段の模様など。メモを取ると眠気がどこかに行ってしまいますので、ぜひお試しください。

 このお芝居の作者は、河竹黙阿弥、通称「黙阿弥(もくあみ)」。多くの歌舞伎作品がありますが、その特徴は七五調のセリフです。「わたりぜりふ」と言って、相互にセリフを言い合ってお芝居が進行する場面が特徴です。このわたりセリフ、けっこう長く続くんです。ビギナーはここでも眠りをさそわれると思います。でも眠っても大丈夫です。黙阿弥のわたり台詞を聞きながら眠るなんて、超贅沢ではありませんか!

 お芝居は約30分であっという間に終わりますが、荒事(あらごと)とはちがう歌舞伎の醍醐味をたのしめるよい演目ですので、ビギナーの方はぜひチェックしてください。みなさま、ひきしまったお芝居をありがとうございました。





★★★☆☆(2)大江山酒呑童子(11:47-12:44)
 二幕目は楽しい舞踊ものです。舞踊といってもお芝居の要素も含まれている演目となります。このお芝居は「松羽目物(まつばめもの)」と呼ばれる形式で、舞台は能舞台のようにシンプルなつくりとなっています。歌舞伎の代名詞とも言える「勧進帳」も同様な松羽目物となっています。

 さて、幕があきますと、木を模した茶色がここちよい松羽目物の舞台一面にひろがります。このときに下座音楽が流れていますがこの音楽は、片シャギリ(かたしゃぎり)と呼ばれています。さあ、いよいよお芝居がはじまるぞ、という緊張感をかもしだしてくれるBGMです。

 舞台には鮮やかな黄色の裃(かみしも)を着た長唄連中が並んでいます。この裃には家紋が記されているのですが、今月は勘三郎追善ということで中村屋の角切銀杏(すみきりいちょう)の家紋がプリントされています。裃が黄色というのは、おしゃれですよね。普通の時代劇でしたら、水色にきまっているので、とても新鮮で美しく見えました。




 このお芝居の見どころは、ズバリ「楽しそうに踊る勘九郎」でしょう。大きな杯(さかずき)をもって、軽快に踊ります。途中ですっぽんから登場するという場面もあります。そして、見ていて面白いのが、杯のお酒を飲むときの仕草。首を左右に小さく振って、「グビグビ」飲んでいる感を醸し出しています。この仕草は歌舞伎にはよくあるもので、「勧進帳」の弁慶が酒を飲む場面、「魚屋宗五郎」で宗五郎がお酒をのむ場面など、いずれも首を左右に振ってこの仕草をしています。ビギナーとしては、「魚屋宗五郎」の宗五郎を演じている芝翫が、ほんとうに酒飲みに見えて一番好きでした。今年のこんぴら歌舞伎での一場面でしたよ。

 杯を片手にした勘九郎演じる酒呑童子は舞台を動き回ります。いや、よく杯を落とさないなと思ってふと杯をよく見ると、杯には指を通す穴があいておりました。ボーリングの玉に穴があいているような感じですよね。なるほど。

 このお芝居は、舞台音楽もとても軽快で心地よいです。芝居の最後には、イヤホンガイドが「さあ、長唄連中による大薩摩(おおざつま)をたっぷりお楽しみください」と言っていました。「唐草(からくさ)の合奏」とも言っていましたが、ビギナーにはよくわからない。。。調べておきます。

 そうして最後には、勘九郎が上手に向かって「大」、下手に向かって「入」という文字を宙に描く動作のあとに、舞台にそろって見えを切って終了です。この終わり方は、ほんとうに芝居が引き締まる感じがします。みなさま、ありがとうございました。





★★☆☆☆(3)東山桜荘子 佐倉義民伝(1:19-2:53)
昼の部の最後は、佐倉義民伝(さくらぎみんでん)です。久しぶりに前幸四郎の白鸚(はくおう)が歌舞伎座に戻ってきました。今回は主役です。白鸚さん、幸四郎襲名披露のときのイヤホンガイドのインタビューでは、「わたしはもうサッカーに例えるとロスタイムという感じですから、おとなしくしています」ということを言っていましたが、人生100歳時代。そんなこと言わずに、もっとバリバリ活躍してくれることに期待しましょう。ベテランのため、安心してみることができますしね。

 さて、ビギナーへのオススメ度からはこのお芝居は二つ星としました。観なくてもよいと思いますし、観るとビギナーは確実に眠ることになると思います。

 舞台は、印旛の渡しの雪の場面でスタートです。ストーリーは、農民の困窮の訴えを将軍に直訴した宗吾をめぐる物語です。「将軍に直訴」というくらいなので、緊迫感が続くお芝居と思っていたのですが、その直訴までの場面に重きが置かれ、ストーリーの展開が遅く、ちょっとビギナーには酷なお芝居になってしまうと思います。さらに、舞台は終始薄暗い場面。「どうぞお眠りください」と会場が語っているようで、見渡すと多数の方の首が曲がっているのを確認できました。寝てしまってもしかたない。




 ビギナーのわたしも、もちろん眠ってしまいましたが、このお芝居で一番印象的だったのは、浅葱幕(あさぎまく)が紅葉だったのです。と手帳に書いているのですが、実はよく覚えていませんので、ほんとうに眠ってしまうお芝居なのか、幕見でもう一度確認しておきます。

 キャストは白鸚のほか、七之助、勘九郎、高麗蔵、彌十郎、歌六とそうそうたるメンバーです。ビギナーのみなさんは、役者の顔を名前を一致させるためにも観た方がよいかもしれませんね。みなさま、素敵なお芝居、ありがとうございました。



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