仁左衛門・玉三郎に会える好舞台!「芸術祭十月大歌舞伎(2018)」(夜の部)初心者向けオススメ度の星評価!


 好評の歌舞伎初心者向け、オススメ度の星評価表!!現在東京・歌舞伎座で公演されている「芸術祭十月大歌舞伎」(夜の部)の初心者向けのオススメ度表です。★が多いほど必見です。満点は★★★★★。公演会場での「盛り上がり度」、「眠っている人度」、「口コミ度」などを総合的に判断しました。★:オススメ、☆:イマイチ

<夜の部>
★★★★☆(1)宮島のだんまり(4:30-4:56)
★★★★☆(2)義経千本桜 吉野山(5:16-6:06)
★★★★★(3)助六曲輪初花桜 (6:36-8:30)




【総評】
・総合点★★★★★
 芸術祭十月大歌舞伎「夜の部」のビギナー向けのオススメ度の星評価は、久しぶりの五つ星、満点です。歌舞伎ビギナーは絶対にみておくべき演目ぞろいです。といいますが、ベテラン歌舞伎ファンから、ちょっと歌舞伎に興味があるかたも含め、日本人ならぜひ見ておきたい演目と言っても過言ではないでしょう。「平成30年文化庁芸術祭参加作品」ということで松竹も力がはいっているのでしょうか、とても贅沢な演目です。

 贅沢なだけでなく、とてもバランスが良く楽しめると思います。一幕目の「宮島のだんまり」は、歌舞伎特有の表現形式「だんまり」をたっぷり楽しめるという贅沢な演目。通常は、劇中の一場面で扱われるだんまりですが、最初から最後までだんまり。「だんまり」を観たことのないビギナーは絶対に観ないといけません。ちょっと滑稽で不思議な世界を体験できますから。

 二幕目の「吉野山」もこれも超有名演目。「義経千本桜」の一部分ですが、これから何度も観ることになりますので、要チェックです。「狐六方」など歌舞伎ファンなら知ってほしい所作もありますし。そして三幕目の「助六」。やっぱり、今回の夜の部はなんと贅沢な。助六は約2時間と長い演目ですが、寝る暇がない!飽きない! まさに歌舞伎の要素がギュギュギュッと詰まっていますので、これもビギナーは絶対に観ないといけません。

 チケットはすでに入手困難かもしれませんが、平日の幕見席は比較的余裕がありますので、有給休暇をとってぜひ幕見でごらんください。





【演目ごとの講評】
<10月13日の観劇記録です>
★★★★☆(1)宮島のだんまり(5:16-6:06)
 平成30年芸術祭十月大歌舞伎夜の部は、宮島のだんまりでスタートです。歌舞伎独特の「だんまり」をたっぷり楽しめます。とても滑稽で不思議な世界を感じることができますので、ビギナーは必見、四つ星です。

 舞台は、浅葱幕の前の赤旗の奪い合いからスタートです。そして大薩摩(おおざつま)の唐草(からくさ)が演奏されます、とイヤホンガイドが説明してました。そして浅葱幕が切って落とされるとだんまりのスタートです。最初に3人が挨拶をしていました。これも歌舞伎っぽくてよい演出ですよね。出演は、扇雀、錦之助、歌昇、巳之助、種之助、隼人、萬次郎、彌十郎などなど、ベテランから若手まで安定した布陣です。




 ストーリーはあるようですが、まったくわからなくてもよいと思います。はじめてだんまりを観るビギナーは、よくわからないでしょう。たくさんの役者が一様にゆったりと動くのですから。その姿はまさにスローモーション。江戸時代のスローモーションですよね。そんな不思議な雰囲気の中で、宝物や名刀をを奪ったり、奪い取ったりと、とても不思議な時間が流れます。とにかく「へんな感じ」を感じ取るので十分でしょう。

 途中、赤い紐をみんなでもつところなんて、よくわからないですよね。でも見た目が美しい感じがします。うまく説明できないのですが、この「ちょっとへん!」という雰囲気を、ぜひ味わっていただければと思います。

 舞台は、最後に幕外の花道で、扇雀が「傾城六方(けいせいろっぽう)」を演じて幕となります。扇雀の舟太夫も立派です。みなさま素敵な舞台をありがとうございました。



★★★★☆(2)義経千本桜 吉野山(11:47-12:44)
第二幕は「義経千本桜」から、とても有名な舞踊モノの「吉野山(よしのやま)」です。度々演じられる演目ではありますが、ビギナーはしっかりと予習をして臨みましょう。この舞踊のポイントは、佐藤忠信が実は狐(キツネ)という点だけです。お伴している静御前が持っている鼓(つづみ)が、その忠信に化けているキツネの母親の皮から作られているため、その鼓を打つとキツネの本性が現れてしまうという点だけおさえておけばよいと思います。

 舞踊ものですから、踊りを楽しめば十分です。と思ったら、大向こうさんが「いよっ、延寿太夫!(えんじゅだゆう)」という声も上がっていました。演奏も清本と竹本のかけあいなどもあり、楽しめることでしょう。配役は、佐藤忠信が勘九郎、早見藤太が巳之助、静御前が玉三郎という豪華な顔ぶれです。ほか、着付後見、花柄の法被を着た花よてんなど、舞台を盛り上げます。

 ビギナーからすると、ちょっと長くて飽きてしまう場面があるかもしれませんが、そのようなときに早見藤太がでてきて、目がさめることでしょう。歌舞伎の舞踊モノの代表として、チェックしておきましょう。




★★★★★(3)助六曲輪初花桜 (6:36-8:30)
 平成30年芸術祭十月大歌舞伎、最後の締めは「助六(すけろく)」です。この助六は超有名な演目ですので、ビギナーは必見です。ぜひ幕見などで観ておきましょう。約2時間ととても長いお芝居なので立ち見だと疲れるかもしれませんが、2時間みていても飽きない展開なのです!

 みなさん、両国にある「江戸東京博物館」に行ったことはあるでしょうか。この中に歌舞伎を紹介するコーナーがあるのですが、ここで実物の「助六」が展示されているのです。「助六」「揚巻」「意休」が展示されていますので、機会をみつけてぜひご覧いただきたいと思います。つまり、この助六がまさに歌舞伎を代表する演目、ということなのです!

 さてさて、この「助六」という演目は、市川家が演じるバージョンと、そうじゃないバージョンがあるらしい。タイトルも微妙に違っていまして、「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」が市川家、今回の「助六曲輪初花桜(すけろくくるわのはつざくら)」がそうじゃないバージョンとなっているとのことです。イヤホンガイドを聞いていると、「この場面は市川家のバージョンにはない場面ですね」などと説明してくれますので、本当に助かります。いや、イヤホンガイドは本当に借りるべきです!




 ビギナーのわたしは、以前、市川海老蔵が演じる助六を観たことがありますが、今回助六を演じるのは片岡仁左衛門。印象としては、海老蔵の助六は「やんちゃな若者の助六」、仁左衛門の助六は「貫禄がある若者の助六」、という感じでしょうか。どちらも悪くはありません。それぞれがまさに助六なので、みなさんもぜひ機会があれば見比べていただきたく思います。

 そして、この助六を観て感じたのですが、結構セリフがききとれる! セリフを聞いて笑うことができる!というのが新鮮でした。長い芝居ですが、まわりを見渡しても寝ている人がほとんどいない。これは、セリフが聞こえるというのもあるのかもしれません。

 とにかく助六についてはいろいろとお伝えしたいことがあるので、以下箇条書きで書かせてください。
・七之助が揚巻を好演。七之助の声が大きく、とてもハリがあり、貫禄ある揚巻を見事に演じきっていました。
・舞台は変更することなくずっと同じなのですが、対象にならぶ花魁や男衆が美しく、観ていて本当に飽きません。下手に並ぶは花魁連中、上手に並ぶは浴衣姿の男衆、後ろに並ぶはあでやかな着物を着た花魁連中と、シンメトリックの美しさを楽しむことができると思います。
・助六は開幕してから約30分後に登場するのですが、花道での出端(では)が長いこと長いこと。10分くらいにわたって、いろいろな見えを切っていました。これは、戦隊ヒーローが登場するといろいろとポーズを決めるのとまさに一緒です。といいますか、戦隊ものはこれを参考にしたという話もありますよね。そして、最後は「丹前六方(たんぜんろっぽう)」でようやく舞台中央へ向かい「冷えものです!」といって、長椅子に座りますが、いやかっこよかった。
・仁左衛門の助六が、平成10年に仁左衛門襲名披露のときに演じて以来、20年ぶりとのことです。いや、20年前の助六も観てみたかった。




・福山の飛脚役として、仁左衛門の孫の千之助が登場しますが、いやきりりとしてよい芝居をしていました。ジャンプして空中であぐらをかいてそのまま着地する場面に、会場は感嘆の声をあげていました。そして、セリフのやりとりもキビキビして惚れ惚れとしてしまいました。将来の仁左衛門、期待できるでしょう。
・途中、助六と白酒売新兵衛が通人里暁に股をくぐらせるシーンがあるのですが、これは今回のバージョンの助六にしかない場面とのことでした。またをくぐるのは彌十郎なのですが、女々しさをうまく演じていて会場の笑いをさそっていました。「オホン」というセリフなど。
・そうして漫江役の玉三郎の登場です。今回は30分と短い出番ですが、会場からは待ってましたの声です。玉三郎と仁左衛門が同じ舞台に立っているのを観られるのは、とてもお得な感じがしますよね。
・意休役の歌六も、貫禄たっぷり。最後には豪快な「海老錦」の着物で登場、好演ぶりが際立っていました。

などなど、みなさま、とても楽しいお芝居をありがとうございました。ビギナーのわたしはすでに幕見も含めて2回助六を観ました。千秋楽までにもう一度観ておこうと思います。



スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク