松也・壱太郎の若手が好演!「十二月大歌舞伎(2018)」(昼の部)初心者向けオススメ度の星評価!


 好評の歌舞伎初心者向け、オススメ度の星評価表!!現在東京・歌舞伎座で公演されている「十二月大歌舞伎」(昼の部)の初心者向けのオススメ度表です。★が多いほど必見です。満点は★★★★★。公演会場での「盛り上がり度」、「眠っている人度」、「口コミ度」などを総合的に判断しました。★:オススメ、☆:イマイチ

<昼の部>
★★★★☆(1)幸助餅(こうすけもち)(11:00-12:20)
★★★★☆(2)於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)(12:50-3:40)




【総評】
・総合点★★★★☆
 平成最後の十二月大歌舞伎、昼の部は二つのお芝居です。ビギナーが観た方がよいか、観て楽しいかという視点からすると、堂々の四つ星です。歌舞伎初心者でも絶対に楽しめるお芝居となっています。☆がひとつ足りないのは、今回のお芝居はいわゆる「歌舞伎」っぽい、派手な衣装は見得がないためです。しかし、内容もわかりやすいので、ぜひ劇場の足を運んで楽しんで頂きたいと思います。

 二幕とも若手が大活躍です。松也、壱太郎とも今後の歌舞伎界を引っ張っていく役者さんです。若い女性にも満足いただけるイケメン揃いだと思います。そして、初日にもかかわらず堂々と演じていてとてもたのもしく感じられました。その脇を中車や萬次郎などのベテラン勢が固めており、とても安心してたのしめるお芝居となっております。





【演目ごとの講評】
<12月2日初日観劇記録です>
★★★★☆(1)幸助餅(こうすけもち)
 昼の部最初のお芝居は、とてもわかりやすい人情お芝居です。なんでも、松竹新喜劇のお芝居をもとにした世話物歌舞伎、ということでとてもわかりやすくて、ゆったりと観劇できるお芝居です。

 幕があくと花道から町人風の二人が現れて、会場への挨拶からお芝居が始まります。この挨拶があると、お芝居がぐっと身近になりますよね。お芝居と観客の距離感を縮めるこの演出にほっこりさせていただきました。そうして舞台上は、赤い非毛氈が敷かれた長いすが真ん中に置かれた、お店前の舞台から始まります。真っ赤な非毛氈(ひもうせん)が舞台上に映えます。

 ストーリーはとてもわかりやすいです。相撲取りの雷(いかずち)と、雷にパトロンとなってすってんてんになった幸助との友情の物語です。雷を中車、幸助を松也が演じています。中車は相撲取りにみえますが、ちょっと小柄な関取から、という感じに見えます。もっと綿をつめて大柄にするとよいのに、とビギナーは思いました。一方の松也は、もうばっちりの適役。夢中になるとお金をつぎ込んでしまう商人風情を好演しております。弱々しい、なよなよしたところで、ぷっと吹き出してしまうほどでした。驚いたときの演技が最高でしたよ。

 一方で、脇をかためる役者さんの力量が、この芝居をより楽しくしているのでは、と思わされました。それは、おきみ役の笑三郎、お袖役の児太郎です。贅沢な布陣ですよね。

 このお芝居は、ストーリーの展開が早く本当に飽きません。とくに、舞台が回転して場面が変わるシーンが2、3度あり、芝居の醍醐味を楽しむことができると思います。二幕目の幕開きで、舞台が幸助餅の店先になるシーンが、ビギナーとしてはとても印象的でした。あかるい場面で、ちょっと早めの年末年始を味わった感じです。ここでイヤホンガイドでは関東と関西のお餅の違いの説明をしていました。関西では餅は丸めて売られますが、関東では切り餅がメインとのこと。それは関東では忙しいために大きい餅を切る習慣になった、というようなことを言っていました。いや、イヤホンガイドは本当にためになります。

 せりふでひとつ印象に残ったのが、幸助が言っていた「ためなみだ」。これって、文楽にもよく出てくるんですよね。目に涙が溜まった感じがイメージできて、とてもすばらしい言葉だとビギナーは思いました。

 とにもかくにも、みなさま、すばらしいお芝居をありがとうございました。





★★★★★(2)於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)
 「おそめひさまつうきなのよみうり」と読みます。これがスラスラ読めるともう歌舞伎ビギナーから卒業かもしれません。このお芝居は、堂々の五つ星です。観ていて本当に楽しいですし、壱太郎の早変わりに驚きます。いわゆる「ザ・歌舞伎」という派手な衣装やアクションはありませんが、華やかで楽しい舞台を楽しめると思います。ビギナーにぜひこの楽しさ、歌舞伎の側面を知っていただきたいために、五つ星としました。ぜひ観て頂きたいとおもいます。

 鶴屋南北(つるやなんぼく)という有名な歌舞伎脚本家による作品です。ビギナーは鶴屋南北にはこれからいろいろとお世話になると思いますよ。「東海道四谷怪談」も南北の作品です。人間関係の複雑な芝居が多いのですが、愛情とお金がからむという、現代にも通じる話を江戸時代の1800年代に表現していた人です。今回は、お染という娘とその恋仲の久松の話が中心で、そこに、宝刀やお金がからむという、スペクタクルにあふれる話となっています。とにかく展開が早いので、ビギナーも飽きることはないと思います。ただ、人間関係が複雑に入り組んでいますので、予習は必須です。きちんと予習をして臨みましょう。

 舞台はにぎやかな下座歌からはじまります。中央におおきなご神木があつらえて、その前に長椅子が二つ、というのどかな江戸時代の雰囲気で幕開きです。このときの下座の唄は「てならいこ」だというようなことをイヤホンガイドで解説していました。

 そしてお染役の壱太郎が登場です。いや、壱太郎の女方は、いつみてもういういしくて新鮮です。すこし童顔なところが、可愛い女性をうまく表現できていますよね。振り下げ帯でつぶししまだの着物、ということです。いや、明るい舞台にとても映える赤い着物です。

 とにかく舞台がぐるぐる変わりますので、飽きません。ビギナーのわたしが印象的だったのが、河原町油屋の場の最後。長唄の独吟のなか、立ち廻りがとても印象的でした。だんまりではないのですが、明るい中のだんまりように、ゆったりとした動きで、不思議な感じの場面です。

 大詰は三蝶四枚の常磐津連中の演奏です。梅枝、壱太郎、松也の所作事がここちよいです。そして最後は、壱太郎が立ち廻りをして、切口上となり、くるり舞台にむかって正座し「まず、これにて昼の部は」と終わりの挨拶。いや、楽しいお芝居でした。とにかく、書くところがたくさんありますが、ぜひご覧いただいて楽しんでいただければと思います。みなさま、素晴らしいお芝居ありがとうございました。




スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク