初心者には難しいかも…「国立劇場3月歌舞伎公演(2019)」初心者向けオススメ度の星評価!


 好評の歌舞伎初心者向け、オススメ度の星評価表!!現在東京・国立劇場小劇場で公演されている「3月歌舞伎公演」の初心者向けのオススメ度表です。★が多いほど必見です。満点は★★★★★。公演会場での「盛り上がり度」、「眠っている人度」、「口コミ度」などを総合的に判断しました。★:オススメ、☆:イマイチ

<3月歌舞伎公演>
★★☆☆☆(1)元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿
★★★☆☆(2)積恋雪関扉 常磐津連中




【総評】
・総合点★★☆☆☆
 ズバリ、初心者にはかなりハードルが高い演目という印象です。もちろん素晴らしい公演なのですが、演目が二つとも渋すぎる…。初心者がこれを観ると歌舞伎を嫌いになってしまうかも、という危惧から二つ星としました。初心者はやめておいた方がよいでしょう。

 中級者以上の歌舞伎ファンにはほんとうに贅沢な公演です。今月の国立劇場の歌舞伎は、12年ぶりの小劇場での公演です。小劇場は会場が狭いですので、ほんとうに近くで役者さんの演技を鑑賞することができます。一幕目は新歌舞伎の「元禄忠臣蔵」から「御浜御殿綱豊卿」。新歌舞伎のため、ビギナーからすると「ザ・歌舞伎」というよりも「時代劇」のような印象をもつでしょう。ストーリーは比較的わかりやすく、複雑ではありません。吉良邸への忠臣蔵の討ち入りの話が前提になっていますので、このあたりの知らない人はよく予習をしておきましょう。ビギナーにはひたすら続く会話劇は酷なのでは、という印象から二つ星としました。

 二幕目は、有名な歌舞伎演目「積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)」という所作事です。所作事なのですがストーリーがあります。内容をしっかりと事前に予習しておくとよりお芝居の流れを理解できます。ただ、全体を通して舞踊モノとなっていますので、そこは割り切ってしまってお芝居を楽しむのも手です。しかし、1時間半と長いですので、やはりしっかりと予習をして望みましょう。

 このお芝居はたくさんの見どころがありますが、ちょっと長い。長すぎてどこがビギナーとして抑えるべきかのポイントが絞りきれません。そのため三つ星としていますが、中級者以上にとっては堂々の四つ星の内容だと思います。ビギナーにはハードルが高い演目かもしれませんが、ぜひビギナーのあなたも歌舞伎の高尚な世界を味わって欲しいと思います。





【演目ごとの講評】
<17日の観劇記録です>
★★☆☆☆(1)元禄忠臣蔵(げんろくちゅうしんぐら)二幕五場
御浜御殿綱豊卿 (おはまごてんつなとよきょう)
 国立劇場小劇場での12年ぶりの歌舞伎、一幕目は新歌舞伎の「元禄忠臣蔵」の「御浜御殿綱豊卿」です。「元禄忠臣蔵」は真山青果という作家の作品です。この「元禄忠臣蔵」という作品名も、「真山青果」という名前も、ビギナーは今後歌舞伎の世界でたびたび目にすることになりますので、これを機会にぜひ真山ワールドを体験していただきたく思います。

 お芝居は新歌舞伎ということもあり、ストーリーは複雑ではありません。とにかくセリフの多い会話劇ですので、最初から最後までの緊張感あふれるセリフのやりとりを楽しんで下さい。といいますが、このセリフのやりとりは歌舞伎ビギナーにはちょっと酷かもしれません。かつ、見得や隈取りなども現れないお芝居のため、二つ星とさせていただきました。これが中上級者視点ですと、3~4星でしょうか。

 配役は豊綱を扇雀、富森助右衛門に歌昇、学者勘解由(かげゆ)に歌昇のお父さんの又五郎、おきよには、扇雀の息子さんの虎之助となっています。扇雀は安定していますよね。そして、今回は歌昇ががんばっています。いや、見事です。豊綱との長い会話劇を見事につとめあげています。若手である歌昇の今後の活躍に大いに期待できるお芝居となっています。

 小劇場歌舞伎は、ほんとうに狭くて臨場感にあふれています。ビギナーのわたしは四国こんぴら歌舞伎の旧金丸座でお芝居を観たことがありますが、それに近い迫力を感じることができました。大劇場との一番の違いは、「ツケ」の音の大きさ。とにかく、ツケがうるさいぐらいに響きます。耳に突き刺さるというかんじでしょうか。

 そして、花道の近さ。とても近いために緊張感が増します。揚げ幕の「チャリン」という音も会場に大きく響き渡るのがとても新鮮です。この歌舞伎の臨場感はなか味わえませんので、ぜひビギナーのみなさんにも味わって欲しいと思いました。お芝居は会話劇です。BGMもとくになく、ほんとうに会話がメインのお芝居です。最後の能舞台の場面で若干の立ち廻りがありますが、ほかはすべて会話劇です。イヤホンガイドの解説もかなり控えめでした。

 この「御浜御殿綱豊卿」は、平成30年の新春浅草歌舞伎でも演じられていまして、ビギナーはそちらも観ていました。浅草では、徳川綱豊卿を松也が、富森助右衛門を板東巳之助が演じていました。とてもよいお芝居だったのですが、ビギナーには厳しいのではと当時の劇評では一つ星としていました。失礼千万ではありますが、当時はそう思っていたのかもしれません。

 いずれにせの、このお芝居はあまり飾られていないだけに役者の素の実力が試される演目だと思います。その点から観ると、玄人向けのお芝居なのかもしれません。もちろん扇雀は申し分の無い演技で、歌昇も立派でした。ぜひ歌舞伎ビギナーから脱したいかたは、このお芝居をご覧いただければと思います。みなさま、ありがとうございました。





★★★☆☆(2)積恋雪関扉 (つもるこいゆきのせきのと)常磐津連中
小劇場歌舞伎の二幕目は、名作と言われる「積恋雪関扉 (つもるこいゆきのせきのと)」です。このお芝居は、荒事のようなあらあらしいやりとりなどは控えめで、ビギナーが想像する「ザ・歌舞伎」とはちょっと違うかもしれません。しかし、所作事とお芝居がミックスされた歌舞伎のいろいろな要素が含まれた作品なのではないでしょうか。ビギナーにはちんぷんかんぷんかもしれませんが、おそらく、中上級者の歌舞伎に目の肥えた人にとってはとても楽しめるお芝居なのでは、とビギナーのわたしは思いました。

 簡単に言うと、歌舞伎初心者にはズバリ眠たい演目かもしれません。ストーリーもあってないようなもので、ビギナーには酷なのですが、歌舞伎の奥深さを知って欲しい、という点から三つ星としました。

 舞台は、うたた寝をしている関兵衛があらわれるところから始まります。そうして花道から小町がやってきてお芝居が展開します。この「積恋雪関扉 (つもるこいゆきのせきのと)」は常磐津の大曲とも言われているとのことで、三挺四枚の演奏もききものです。

 配役は、主役の関兵衛に菊之助、小野小町に梅枝、宗貞に萬太郎、という顔ぶれです。菊之助と梅枝はこの演目では初役とのことで、朝日新聞夕刊によると「未来に期待が持てる。両優の初役を見た、と数十年後まで自慢したい向きは、ぜひ劇場へ」と劇ホメです。いや、りっぱに演じていました。

 ビギナーのわたしが驚いたのは、菊之助の声の太さ、大きさです。会場に響き渡る声の太さに驚きました。そして、それが自信にあふれている声だったのです。女方の印象が強いためか、この声の力強さに圧倒されました。

 とにかくいろいろな要素が盛り込まれたお芝居で、ビギナーとしての修練不足を痛感に感じさせるお芝居です。目を離せない場面が続く中、鷹が飛んでくる場面でようやくほっとつけた印象でした。

 見どころはたくさんありますが、黒主にかわった菊之助と、梅枝のやりとり、かけあいに現代歌舞伎の技の全てが凝縮されているのでは、と思いましが。みなさま、すばらしいお芝居をありがとうございました。




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