平成最後はやっぱり仁左衛門と猿之助!「四月大歌舞伎(2019)」(夜の部)初心者向けオススメ度の星評価!


 好評の歌舞伎初心者向け、オススメ度の星評価表!!現在東京・歌舞伎座で公演されている「四月大歌舞伎」(夜の部)の初心者向けのオススメ度表です。★が多いほど必見です。満点は★★★★★。公演会場での「盛り上がり度」、「眠っている人度」、「口コミ度」などを総合的に判断しました。★:オススメ、☆:イマイチ

<夜の部>
★★★★★(1)源平布引滝 実盛物語(4:30-5:55)
★★★★☆(2)猿翁十種の内 黒塚(6:25-7:38)
★★★☆☆(3)二人夕霧(7:58-8:56)




【総評】
・総合点★★★★☆
 平成最後の大歌舞伎「夜の部」がビギナーにおススメめできるかどうかの星評価は、堂々の四つ星としました。時代物、舞踊モノ、世話物と、バランスがよいうえに三幕とも有名な演目ですので、ビギナーは絶対に観たようがよいと思います。一幕目の歌舞伎の定番の「実盛物語」は言うまでもなく、特に二幕目の「黒塚」は、歌舞伎初心者からすると新しいのか古いのかよくわからない、不思議な雰囲気のお芝居と舞踊かもしれませんが、それが現代歌舞伎を象徴する名作だというのに接するのに良い機会です。そして、三幕目の上方歌舞伎の立役がなよなよっとした感じの世話物お芝居も、新鮮に感じることでしょう。

 もし一幕だけ幕見で観たい、というのならとてもまよいますがまずは実盛物語を観ることをお勧めします。人間国宝の仁左衛門の演技を観ておいて損はありませんから。




【演目ごとの講評】
<6日の観劇記録です>
★★★★★(1)源平布引滝 実盛物語(4:30-5:55)
 一幕目は有名な歌舞伎演目である「源平布引滝 実盛物語」です。当代一の歌舞伎役者と言われる片岡仁左衛門が実盛を演じる名作ですので、ビギナーは必見です。もちろんビギナーへのオススメ度は満点の五つ星です。初心者で歌舞伎をこれから知りたいと思っている人は絶対に観ないといけません。

 そして、ストーリーは複雑です。必ず予習をして臨みましょう。こちらに人間関係図がありますので参考にしてください。冒頭から女の腕(かいな)がでてきていきなり不思議なお話から始まるのですが、物語の進行が結構ゆったりなので油断するかもしれませんが、後半からストーリーがどんどん展開します。気をぬくとついていけなくて眠ってしまうこと間違いありませんので、しっかりと予習する必要があります。

 舞台は、貧相な小屋で糸を紡いでいるおばあさんとならず者の二人の会話の場面から始まります。すると、眞秀演じる太郎吉と松之助演じる九郎助が帰ってきて、その本日の釣果に女の腕(かいな)があることから物語は展開していきます。そうして花道から仁左衛門と歌六が登場してどんどんと進行してく、というようなお芝居です。

 配役は、実盛に仁左衛門、葵御膳に米吉、小万に孝太郎、瀬尾十郎に歌六、太郎吉に眞秀、九郎助に松之助という安定した布陣です。おばさま方のいちばんの注目はもちろん眞秀くんでしょう。寺島しのぶの息子である、眞秀が舞台に出てくるとあたたかいざわめきが会場に広がっていました。眞秀くんの目鼻立ちがはっきりとした結構濃い顔が舞台に映えていましたし、とてもはきはきとセリフを話していました。令和を超えて活躍するであろう新世代の歌舞伎役者の活躍に期待したいところです。

 お芝居は、瀬尾十郎が太郎吉のもつ刀で自害するところあたりから、より複雑になります。このあたりでばたばたしないよう、しっかりと把握しておきましょう。また、最後の馬に乗って実盛が去るシーンも、眞秀が引き立て役となってお芝居が引き締まっています。とくに、実盛が懐からちり紙を出してそれを手で揉んでから眞秀の鼻をかんであげるシーンは、いや、細かいのにとても自然。この何気ない演技でも仁左衛門の役者としての実力を伺うことができると思います。

 ビギナーからするとこの作品は難しくて、よくわからなくて、眠たいお芝居かもしれません。しかし、このお芝居も三回見るとようやくなにを伝えたいのか、仁左衛門のどこがすごいのかがよくわかると思いますので、初心者のみなさんは、がんばって観るようにしましょう。みなさま、すてきなお芝居をありがとうございました。





★★★★☆(2)猿翁十種の内 黒塚(6:25-7:38)
 二幕目はまさに「猿之助オンステージ」。猿之助の素晴らしい演技力と躍動感ある踊りは、絶対に観なければいけません。ビギナーからすると、この演目はお芝居といいますか、所作事といいますか、一風変わった味わいとなっていますが、とにかく猿之助をみていただきたく思います。

 ストーリーはシンプルではありますが、おおまかなストーリーだけは事前におさえておきましょう。主人公は猿之助演じる岩手というおばあさん、そして鬼女です。この岩手が鬼女の正体を明かしてからがクライマックスとなります。このお芝居は「上の幕」「中の幕」「下の幕」の3部構成に別れています(分け方の呼び方は違うかもしれません)。

 「上の幕」は、四挺四枚の長唄が流れる中、舞台中央の小屋で糸車を回す影絵の場面から始まります。終始薄暗い中でのお芝居ですので、油断せずに舞台を見守りましょう。バックに流れる長唄を聴いていているととても心地よいのですが。

 そして「中の幕」での見どころは、猿之助の踊りです。舞台後ろは一面のすすきの野原。薄暗い月明かりに照らされて踊る猿之助はとても幻想的です。とくに肩を上下させながら、楽しみを表現する場面は、猿之助の演者としての実力がまさに発揮されている場面で注目していただきたく思います。

 また、この幕ではスポットライトがとても効果的です。ほぼ真っ暗な歌舞伎座でスポットライトのみで猿之助が映し出される姿は、とても神秘的で、照明さんの芸術性の高さを改めて感じされられました。「よっ!照明さん!」とこれも大向こうさんに叫んでいただきたいところです。

 最後の「下の幕」では、大薩摩の豪快な演奏のもと、巨大なツボのような、イソギンチャクのような、かまぼこのような容れ物から、鬼になった猿之助が登場です。鉄杖をもっての豪快な踊りが続いて幕となります。

 月光に照らされる一面のススキの野原という幻想的な場面と、猿之助の妖艶な踊りとお芝居に圧倒されっぱなしの演目でした。ビギナーからすると「ザ・歌舞伎」とは違う演目なので面食らうかもしれませんが、平成最後の歌舞伎にふさわしいお芝居だと思いますので、ぜひご覧いただきたいと思います。みなさま、ありがとうございました。





★★★☆☆(3)二人夕霧(7:58-8:56)
 平成最後の定例歌舞伎演目は、上方歌舞伎の「二人夕霧(ににんゆうぎり)」です。上方歌舞伎は、江戸歌舞伎と違って豪快さはありませんが、優男の弱々しさを表現するなど、味わい深いものがあります。ビギナーにはこの機会に上方歌舞伎の雰囲気を味わってもらいたいですので、三つ星としました。いわゆる、隈取りや派手な見得などの歌舞伎を観ることはできませんが、歌舞伎の人情ぶかさを味わっていただきたいと思います。

 配役は、上方歌舞伎の代表、鴈治郎が伊左衛門を、先の夕霧を魁春、後の夕霧を孝太郎が演じています。彌十郎と東蔵も出演していまして、安定した布陣で鴈治郎を盛り立てます。

 展開が遅いお芝居のため、ビギナーは眠たくなるかもしれません。いや、絶対に寝てしまうでしょう。しかし、途中からの彌十郎のコミカルな演技でなんとか盛り返すことができると思います。彌十郎がでてくるまでの辛抱です。いや、それにしても彌十郎って背が高いですよね。鴈治郎と並ぶと、阪神巨人かと思いました。

 舞台は四挺四枚の力強い浄瑠璃演奏で進行します。演者の黄色い裃がとても新鮮ですね。最後には小判をばらまいたり、関西風の手締めがおこなわれたりと、とにかく楽しいお芝居です。ぜひご覧いただきたいと思います。みなさま、ありがとうございました。




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