勸玄くんの外郎売です!「七月大歌舞伎(2019)」(昼の部)」初心者向けオススメ度の星評価!

 好評の歌舞伎初心者向け、オススメ度の星評価表!!現在東京・歌舞伎座で公演されている「七月大歌舞伎」(昼の部)の初心者向けのオススメ度表です。★が多いほど必見です。満点は★★★★★。公演会場での「盛り上がり度」、「眠っている人度」、「口コミ度」などを総合的に判断しました。★:オススメ、☆:イマイチ

<昼の部>
(1)★★★☆☆新歌舞伎十八番の内 高時(11:00-11:54)
(2)★★★☆☆西郷と豚姫(12:09-1:11)
(3)★★★☆☆新歌舞伎十八番の内 素襖落(1:41-2:29)
(4)★★★★★歌舞伎十八番の内 外郎売(2:54-3:28)

【総評】
・総合点★★★★☆
 令和元年七月大歌舞伎は、四つの演目を楽しむことができて、かつ、堀越勸玄くんの可愛い早口のセリフも聞くことができますので、四つ星としました。といいますが、プレミアムチケットで、すぐに全日全席売り切れです。幕見席も厳しい争いですが、早めに並んで挑戦しましょう。
 四つの演目の内、歌舞伎十八番関連が三つもあるという、異例とも言える演目揃いではあります。ただし、そのうちの二つは「新歌舞伎十八番」という「新」がつく「歌舞伎十八番」で、「歌舞伎十八番」は最後の「外郎売(ういろううり)」だけですので注意しましょう。それら歌舞伎十八番の間に、新作歌舞伎が挟まれていますが、バランスの良い演目揃いで、ビギナーも楽しめると思います。

【演目ごとの講評】
<13日の観劇記録です>
(1)★★★★☆新歌舞伎十八番の内 高時(11:00-11:54)
 令和元年七月大歌舞伎の幕開きは、右團次が主役の「高時(たかとき)」です。これは新歌舞伎十八番からの演目です。ちなみに「新歌舞伎十八番」と「歌舞伎十八番」は違います。ビギナーとして、新歌舞伎十八番で覚えておく演目は、「高時」「素襖落」「紅葉狩」「鏡獅子」でまずは十分でしょう。一方の「歌舞伎十八番」は、たくさんあります。ほぼ全て覚えてもよいくらいですが、「勧進帳」「毛抜」「暫」「外郎売」「鳴神」「矢の根」という演目は覚えておきましょう。

 さて、この「高時」ですが、お芝居のストーリーもわかりやすく、ビギナーも十分に楽しめると思いますので四つ星としました。天狗の踊りなどもポップですし。

 幕が開くと、舞台中央に籠に乗った犬がちょこんといるという、予想外の光景に会場からやさしい笑い声が漏れるスタートです。その後、子犬が登場するなど冒頭は「犬づくし」。そして鉄扇でちょこんと額をたたかれた犬が、「ンー、バタンッ」と倒れると会場からはまた静かな笑い。そうして物語がスタートします。

 このあとに改めて幕がひらくと、高時役の右團次が横を向いて座ってお酒を飲んでいる場面となります。イヤホンガイドによりますと、この主役が横を向いてお芝居がスタートするのは、初演当時の明治時代としてはとてもめずらしい演出だったとのことです。いまはテレビドラマなどでいろいろな場面を見慣れている我々ですが、たしかに、舞台でしかお芝居を観たことのない人にとっては、横を向いて登場することは、たまげる場面だったのでしょうかね。

 上手に大薩摩、下手に竹本が居並ぶ舞台の中で、8人の天狗が現れてぴょんぴょん跳ねる踊りが始まり、それに高時が翻弄されるという場面が見どころでしょう。天狗は鼻が大きい赤い天狗ではなく、くちばしがトリのようなちょっと怖い天狗ですね。イヤホンガイドによりますと、天狗に翻弄されて、天狗の踊りとタイミングをずらして踊っているのがとても自然に見せるのが、主役の技量の高さの証しなのだそうですが、たしかに右團次は、そのように踊っていました。たいしたものです、右團次!

 ビギナーも楽しめるお芝居、踊りだと思いますので、肩の力の抜いて楽しみましょう。みなさま、楽しいお芝居をありがとうございました。

(2)★★★☆☆西郷と豚姫(12:09-1:11)
 二幕目は新作歌舞伎「西郷と豚姫」です。新作歌舞伎とは、いわば時代劇のようなフツーのお芝居とも言えます。そのためストーリーも難しくなく、セリフも現代劇と同様ですので、ビギナーも楽しめることでしょう。及第点の三つ星としました。

 このお芝居の主役は、「豚姫」と呼ばれる女性のお玉を演じる獅童です。獅童の表情を楽しむお芝居でしょう。ちょっと哀しい物語ですが、最後の獅童の表情ににんまりとしてしまう、よいお芝居です。

 難点はお芝居が終始暗い中で展開されることです。そのため、油断すると寝てしまいます。周りを見渡すと、寝ている人が結構いました。でも最後のほうにはみなさん、きちんと起きていたようです。

 最後に舞台が回って場面が変わるところがとても自然で、大道具さんの力量が伺えます。みなさま、お疲れ様でした。そして、ありがとうございます。

(3)★★★☆☆新歌舞伎十八番の内 素襖落(1:41-2:29)
 三幕目は海老蔵の登場です。「素襖落」は「すおうおとし」と読みます。素襖(すおう)とは和服の一種で、着物の羽織のようなものでしょうか。この素襖をやりとりする一種のコメディーです。内容も難しくなく、楽しめるためビギナーにも楽しめる及第点の三つ星としました。

 この演目は松羽目物(まつばめもの)と呼ばれる種類のお芝居で、舞台後方には大きな松が絵がかれた舞台で物語が進行します。そのため、いつもの三色の定式幕(じょうしきまく)ではなく、富士山の緞帳が上がってお芝居がスタートします。

 最初に流れるのが「片しゃぎり」という下座音楽。力強い笛の音が、会場の緊張感を高めます。そうして太郎冠者(たろうかじゃ)を演じる海老蔵が登場して、物語は進行します。このお芝居の海老蔵、ひょうきんな役のためか、とても若々しい若者に見えます。楽しそうなお芝居を表情でも演じているかのようです。

 落とした素襖を拾われ、それを奪い返そうと、滑稽な踊りが見どころでしょう。海老蔵のもつ扇子にはコウモリの絵が描かれているのにも注目しましょう。どこか、可愛いこうもりですから。

 このお芝居は、松羽目物で有名な「棒しばり」の「素襖版」と言えるかもしれません。荘厳な舞台の前で、滑稽なお芝居が繰り広げられてとても新鮮に感じるかもしれません。たのしいお芝居をありがとうございました。

(4)★★★★★歌舞伎十八番の内 外郎売(2:54-3:28)
 さあ、昼の部最後は、歌舞伎十八番の「外郎売(ういろううり)」です。これは、「新」でない正真正銘の「歌舞伎十八番」です。このお芝居は、堀越勸玄くんが出演するということを除いても、とても歌舞伎らしい豪華絢爛な舞台を楽しむことができますので、ビギナーは絶対に必見です。気になる方は、朝早くから幕見にならんで是非観るようにしましょう。

 舞台は、浅葱幕からスタートです。幕がまさに切っておろされると、派手な衣装の役者さんが勢揃いです。圧巻です。会場からはため息が漏れていました。そうして、花道から、外郎売りの海老蔵と、貴甘坊(きかんぼう)の堀越勸玄くんの登場です。ここで会場からは万雷の拍手です。

 「私のなまえは、ほりこしかんげん...」というセリフとともに早口セリフに挑戦です。勸玄くんは、約4分間にわたって堂々とセリフを話していましたよ。そのあとに、立ち廻りもあったりと、これはプレミアムチケットですよね!

 一方で朝比奈(あさいな)役の獅童、その妹舞鶴を演じる児太郎の踊りも素晴らしく、お芝居の重しのように引き締めていました。そして、最後は「絵面ひっぱりの見得」。美しい絵画のようなストップモーションでの終幕です。最後まで長い拍手が続いていました。海老蔵さん、堀越勸玄くん、お疲れ様でした。そして、海老蔵さん、体を大切に!

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