玉三郎の阿古屋!「十二月大歌舞伎(2018)」(夜の部)初心者向けオススメ度の星評価!


 好評の歌舞伎初心者向け、オススメ度の星評価表!!現在東京・歌舞伎座で公演されている「十二月大歌舞伎」(夜の部)の初心者向けのオススメ度表です。今回の夜の部は玉三郎のフィーチャー度合いの違いでAプロ、Bプロと分かれています。★が多いほど必見です。満点は★★★★★。公演会場での「盛り上がり度」、「眠っている人度」、「口コミ度」などを総合的に判断しました。★:オススメ、☆:イマイチ

<夜の部>Aプロ
★★★★★(1)壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)(4:30-5:45)
★★☆☆☆(2)あんまと泥棒(あんまとどろぼう)(6:20-7:05)
★★★★☆(3)二人藤娘(ににんふじむすめ)(7:30-7:53)




【総評】
・総合点★★★★☆
 Aプロの夜の部は、ビギナーは絶対にみなければなりません。そのため、四つ星としました。玉三郎が演じる「阿古屋」は、この先滅多に見られなくなりますので、この機会を逃すことなくみるべきです。幕見席に並んでぜひ阿古屋をチェックしましょう。

 今月の夜の部は、阿古屋がメインでほかはサブディッシュといっても過言ではないでしょう。一幕目の「阿古屋」で感動し、二幕目の「あんまと泥棒」でちょっとほっこり、そして最後の「二人藤娘」でキリリと締めくくる、というとてもバランスの良い演目です。ビギナーも飽きることなく観劇できると思います。

【演目ごとの講評】
<12月2日初日Aプロの観劇記録です>
★★★★☆(1)壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)
 平成最後の年の瀬、十二月大歌舞伎の夜の部(Aプロ)は有名な「阿古屋(あこや)」で開幕です。正式には壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)の阿古屋となりますが、阿古屋でよく知られるとても有名な演目です。

 ストーリーはシンプルです。源平合戦の後に平家が滅んだ後、負けた平家の残党による反乱をおそれた源氏側は、平家側の武将悪七兵衛景清の行方を探します。その景清(かげきよ)の愛人、遊君阿古屋に景清の居どころを白状するよう迫りますが、阿古屋は知らないの一点張り。では、拷問にかけようかというところで、重忠(しげただ)は、拷問ではなく、琴、三味線、胡弓を弾かせて、その乱れをもとに阿古屋を追い詰めよう、と思いつきます。そうして、阿古屋が琴、三味線、胡弓を弾きますが、音に乱れは一切無く、放免される、というお芝居です。これだけ知っていれば、あとは演奏される各楽器の音色を楽しむことがメインのお芝居です。




 阿古屋を演じるのは、玉三郎、重忠に彦三郎、六郎に板東亀蔵、岩永左衛門に松緑というとても安定した布陣です。

 ビギナーのわたしはいろいろと歌舞伎を観てきましたが、いや、このお芝居はほんとうに変わったお芝居。だって、お芝居のほとんどが、琴、三味線、胡弓の独演会なのですから。

 幕開きは、木目が目に新鮮なお裁きのしらすの場。4蝶4枚の力強い義太夫節で始まります。人形浄瑠璃がルーツの作品のため、人形が動き出す雰囲気を役者が演じることでスタートします。まずは、舞台中央の重忠役の彦三郎に命が吹き込まれ、つぎに、岩永左衛門役の赤っ面、松緑が動きだします。松緑は芝居の間中終始人形のように、カクカクとした動きを演じています。すこし滑稽ですが、それがとても新鮮に感じることでしょう。




 そして、冒頭の30分はいきなり動きのない場面が続きますので、ビギナーにはつらい場面です。でも安心してください。ここは眠ってもよいです。そのあとの、三つの楽器を演奏する場面さえ観ておけば良いですから。

 そうして、詮議された阿古屋が琴、三味線、胡弓をつぎつぎと、ゆったりと演奏し始めます。長さは琴が15分、三味線が7分、胡弓も7分でした。いや、玉三郎ってすごいですね。それぞれの楽器を美しく奏でています。会場からはため息のような声がもれていました。

 とにかく、このお芝居は、芝居というより、演奏会。玉三郎ショーです。不思議なお芝居です。音楽が長いのでほんとうにゆったりと観劇できますので、ビギナーはぜひチェックしましょう。





★★☆☆☆(2)あんまと泥棒(あんまとどろぼう)
 このお芝居は、中車の一人芝居、中車ショー、という印象です。いわゆる普通のお芝居です。なんでも、NHKのラジオドラマの脚本を元にしたお芝居とのことです。歌舞伎とはちょっと違う印象がありますので、二つ星としました。

 芝居は終始薄暗い中で進行します。内容はわかりやすいのですが、わかりやすすぎるので予習をしないほうがよいと思います。予習をして内容がわかってしまうと、安心して眠りに落ちてしまう可能性大です。




 主役はあんま役の中車で、泥棒を松緑が演じます。ふたりのやりとりが滑稽です。と、ビギナーの私は安心してあまり記憶がないので、みなさんもご注意ください。この幕の前の玉三郎の阿古屋とのギャップに、ちょっととまどったお芝居でもありました。しかし、中車、松緑のやりとりは楽しいですので、肩の力を抜いてみなさまお楽しみください。





★★★★☆(3)二人藤娘(ににんふじむすめ)
 Aプロの夜の部最後は、梅枝、児太郎による美しい所作事、舞踊ものの「二人藤娘」です。このお芝居は「黒柿萌葱(くろかきもえぎ)」の定式幕ではなく、富士山の緞帳がおりた状態で会場が暗くります。真っ暗になります。

 そして、照明がまさに「パッ」とつくと、舞台上はすでに緞帳はあがっており、奥にあざやかな明るさの中で美しい二人の娘が現れます。舞台には梅枝が、そして花道には児太郎がたたずんでいるではありませんか!この暗闇からの変化、そして目の前に広がる美しい舞台の彩りに、会場からは驚嘆の声があがっていました。とても美しい場面からの幕開きです。




 二人の藤娘たちは、藤の花をもしたしだれの装飾をもち、黒い塗り傘を持って踊ります。舞台には、後ろに演奏者が並ぶのではなく、上手に長唄連中、下手にお囃子連中が並ぶ、というフォーメーションです。こちらもとても新鮮です。

 梅枝、児太郎とも華麗にあでやかに踊っています。この二人は上杖もありますので、舞台に本当に映えますよね。美しい踊りに見とれているうちに幕となりました。すばらしい所作事、ありがとうございました。ビギナーとしては、ぜひ幕開きのこの感動をみなさんに味わってもらいたいと思います。



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