菊五郎の立廻り必見!「六月大歌舞伎(2018)」(昼の部)オススメ度の星評価!


 好評の歌舞伎初心者向け、オススメ度の星評価表!!現在、東京・歌舞伎座で公演中の「六月大歌舞伎」(昼の部)の初心者向けのオススメ度表です。★が多いほど必見です。満点は★★★★★。公演会場での「盛り上がり度」、「眠っている人度」、「口コミ度」などを総合的に判断しました。★:オススメ、☆:イマイチ

<昼の部>
★★★★☆(1)妹背山婦女庭訓 三笠山御殿(11:00-12:53)
★★★★☆(2)六歌仙容彩 文屋(1:23-1:47)
★★★★☆(3)酔菩提悟道野晒 野晒悟助(2:02-3:52)




【総評】
・総合点★★★☆☆
 六月大歌舞伎・昼の部のビギナー向けの星評価は、三つ星です。「平均点」というところでしょうか。第一幕の「妹背山婦女庭訓」は歌舞伎の定番演目。初心者はぜひこの機会にこの演目をチェックしましょう。三幕目の菊五郎の立廻りが観ていて楽しいと思います。全体的にみるとすこし地味な演目のような気がしまして、どちらかというと初心者よりも中級者から上級者向けの演目かもしれません。



<6月2日初日の観劇記録です>
★★★★☆(1)妹背山婦女庭訓 三笠山御殿(11:00-12:53)
 歌舞伎でよく演じられる定番の演目です。荒事(あらごと)と呼ばれるいわゆる「ザ・歌舞伎」の場面からスタートしますので、初心者としても目で楽しめると思います。ただ、ストーリーは複雑ですので、しっかり予習をして臨みましょう。予習なしで観劇するとちんぷんかんぷんになります。

 実は、 ビギナーのわたくしが初めて「歌舞伎って楽しいかも?」と思ったのがこの演目です。その理由は「おだまき」です。苧環(おだまき)というモノがわからず、それが登場してくるのをきっかけに歌舞伎に興味を持ちました。今回は松也が苧環をもって現れますが、前回もまさに松也でした。「松也=苧環」となっておりまして、松也さん、すみません。しかし、松也はいい男ですから、女性に好かれる役がとてもはまり役だと思います。

 ほか、荒々しい鮒七(ふなしち)役に松緑です。まじめな感じがとてもはまっており、熱演しておりました。そして、この演目の主役はお三輪を演じる時蔵です。時蔵はおそらく現代歌舞伎を代表する女形の一人です。ビギナーのわたしは、もちろん時蔵さんのファンですから。「絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)」のうんざりお松を演じる時蔵さんに惚れました。さて今回時蔵さんは、嫉妬に狂うお三輪を熱演してます。嫉妬に狂う女の生き血を笛に注いで、その笛を吹くと・・・という生々しいストーリもかぶきらしいですよね。

 朝日新聞夕刊の演劇評でも書かれていましたが、このお三輪の演技方法には二つの流れがあるとのこと。ひとつ中村歌右衛門流、もうひとつは玉三郎流。今回、時蔵さんは中村歌右衛門流を演じているとのことです。ちなみに、玉三郎流は若手に伝搬している、とのことでした。具体的なことは新聞でチェックください。いずれにしても、時蔵さんは嫉妬に狂う女性を見事に演じていました。

  このお芝居のもう一つの注目点は、対称の美しさではないでしょうか。舞台を中心として鏡のように対称図が構成されています。幕開けの荒事風な場面はとくに美しい。御簾(みす)を中心してすべてが対称。これが様式美をより際立たせていいます。この点にもぜひ注目して観劇いただきたく思います。

 あと、芝翫が女形の「おむら」として登場するのも必見です。あの男らしい芝翫さんが女形ですから。ちょっと強面(こわおもて)ですが、新宿2丁目にいそうなタイプの女性を演じています。出番はほんのすこしだけですから、「ごちそう」でしょうね。

 そして、イヤホンガイドも面白かった。「お三輪がズンズンと入っていきます」とか解説してくれていました。いろいろな面で歌舞伎らしい場面がありますので、ビギナーのみなさまも自分なりに楽しい部分を見つけられる演目だと思います。みなさま、素敵な舞台をありがとうございます。



★★★★☆(2)六歌仙容彩 文屋(1:23-1:47)
 二幕目は菊之助の舞踊ものです。三梃四枚の清元連中による、ちょっと滑稽な所作事で、気楽に楽しめます。菊之助がとぼけた公家役で登場し、8人の官女が賑やかさに花を添えます。この官女はいつもは立役(男役)を演じる方のため、声も図太く男性の声のため、滑稽でたのしめる舞台となっています。踊りもののため、ビギナーも肩肘張らずに楽しめる舞台でしょう。
 複雑な踊りを見事に踊り通している菊之助、あっぱれです。どのようにして踊りの順番を覚えているのだろうと、不思議に思っているうちに幕となりました。官女のみなさまも含めて楽しい舞台をありがとうございます。




★★★★☆(3)酔菩提悟道野晒 野晒悟助(のざらしごすけ)(2:02-3:52)
 昼の部最後の演目は、歌舞伎の有名な脚本家、河竹黙阿弥による世話物、野晒悟助(のざらしごすけ)です。世話物という種類の歌舞伎ですので、ビギナーには普通の時代劇っぽく見えるかもしれません。色男の悟助がいろいろな女性に好かれる、という話が筋で、ストーリーは複雑ではありませんので、難しいことを考えずに初心者にも楽しめると思います。

 幕が開きますと、舞台は茶屋の場面から始まります。茶屋での白酒、山川酒のやりとりが面白く、すんなりとお芝居に入り込めることでしょう。歌舞伎の世話物は、このような茶屋での世間話などからスタートする例が多いですよね。赤い非毛氈(ひもうせん)が敷かれた長いすを見るとほっとするのは、日本人ならではの感覚かもしれませんね。

 ビギナーは何を楽しんだらよいのか。などと難しいことを考えることなく、楽しめる演目だと思います。強いてポイントとしてあげるとすれば、(1)舞台が回転して場面が展開するシーン、(2)セリフが五七調で小気味よい点、(3)そして最後、傘を用いた立廻りがポイントでしょうか。浅葱幕(あさぎまく)が切って落とされると、「音羽屋」の傘をもった若人がずらりと並び、立廻りが繰り広げられるシーンはとても美しいものです。傘という小道具を組み合わせていろいろなものを表現するのは、とても楽しくもありますよね。

 ほか、ぜひ注目してほしいのは、着物の柄です。悟助の着物にはなんとガイコツが描かれているのです。そして、戸平の着物も緑の格子状の模様で、もうポップアート。着物をみているだけで楽しくなります。

 配役は、菊五郎が悟助。そもそもこのお芝居は、河竹黙阿弥が五世尾上菊五郎のために書き下ろした作品ですので、菊五郎がかっこよく描かれています。ほか、戸平に菊之助、お賤に児太郎、仁三郎に左團次と安定した布陣です。みなさま、すてきなお芝居をありがとうございました。



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