三浦しをん「仏果を得ず」を読んだ。解説は酒井順子さんですが……


 三浦しをんさんの「仏果を得ず」を読みました。なるほど。先に紹介した「あやつられ文楽」はこの本の取材の過程を本にしたものなのね。かなり内容がだぶっているので、先にこちらを読んであとから「あやつられ」を読むことをオススメします。

 オススメ度は☆☆☆の星三つ。やはり文楽や歌舞伎を知らない人にはちょっとハードルが高いような気がしますが、平成の世の中でも登場人物たちのような現代人が文楽を演じているのだ、ということがわかれば十分かもしれません。一般の人からすると「そもそも文楽ってどんな人が演じているの?」と疑問に思っているでしょうから。

 一方で、文楽好きの三浦さんの「文楽はへんてこだけど面白いし、もっと身近なものなのだ!」という心の叫びがひしひしと伝わってくる小説です。「舟を編む」の文楽版とも言えるでしょうか。そして「プリンが大好きな三味線弾き」、「ラブホテルを定宿にする義太夫」などなど、文楽のイメージとはほど遠いであろう小道具をたくさん使って、現代生活になじませようとしている努力は買いましょう。でも、それが逆にちょっと痛く感じました。もっと普通の小道具でもよいのではと。「ラブリーパペット」というラブホテルの名前がでてきたときは、ちょっと引いてしまいました……。

 では、どのような文楽小説がよいのかはよくわかりません。これも一つの手法ではあると思います。みなさんもぜひ読んでみてください。ビギナーの筆者としては、山本一力の「千両かんばん」のような、ばりばりの男世界の、ばりばりの職人世界の、こってこってな文楽人生小説というのを三浦さんに期待したいところです。紅一点なしの。三浦さん、いかがでしょう。

 それにしても、最後の酒井順子さんの文末の解説は「わたしは文楽の面白さがわからなくてあまり興味もありませんが、よく書けていますよー」とひとごとのように語っているようにも思えまして、それがが結構面白かったりして。
仏果を得ず (双葉文庫) 文庫
海老蔵を見る、歌舞伎を見る 単行本
歌舞伎 家と血と藝 (講談社現代新書 2221)
玉三郎 勘三郎 海老蔵 平成歌舞伎三十年史 (文春新書 1234)
知らざあ言って聞かせやしょう: 心に響く歌舞伎の名せりふ (新潮新書 24)

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