わかりやすくバランスよい演目揃い!「三月大歌舞伎(2018)」(昼の部)オススメ度の星評価!


 好評の歌舞伎初心者向け、オススメ度の星評価表!!現在、東京・歌舞伎座で公演中の「三月大歌舞伎」(昼の部)の初心者向けのオススメ度表です。★が多いほど必見です。満点は★★★★★。公演会場での「盛り上がり度」、「眠っている人度」、「口コミ度」などを総合的に判断しました。★:オススメ、☆:イマイチ

<昼の部>
★★★★☆(1)国性爺合戦(11:00-12:36)
★★★★☆(2)男女道成寺(1:06-2:00)
★★★☆☆(3)芝浜革財布 上の巻(2:20-3:04)
            下の巻(3:14-3:29)




【総評】
・総合点★★★☆☆
 三月大歌舞伎は、一月と二月の高麗屋襲名のお祝いモードが終了し、通常歌舞伎にもどった公演です。華やかな祝幕ではない、「いつも」の定式幕(じょうしきまく)を見てほっとされた常連さんも多いことでしょう。

 昼の部は、総合点で三つ星の「ビギナーが見てもそれなりに楽しめる公演」とさせていただきました。初心者にオススメなのは一幕目、国性爺合戦の荒事(あらごと)は、ビギナーも目から楽しめるでしょう。二幕目は美しい歌舞伎の舞踊、所作事です。三幕目はとてもわかりやすい世話物。バランスのよい演目なので、ぜひチェックしましょう。




<3月10日(土)の観劇結果です>
★★★★☆(1)国性爺合戦(11:00-12:36)
 三月大歌舞伎は、「曽根崎心中」などの心中物でよく知られる近松門左衛門の名作、国性爺合戦(こくせんやかっせん)で開幕です。歌舞伎らしい荒事(あらごと)で、隈取りなどを楽しめる演目です。「合戦」というぐらいですから、つねに合戦が繰り広げられて、しばしば立ち回りがある演目かな?と思っているビギナーも多いと思いますが、そうではありません。立ち回りはほんの少し。メインは家族や恋人を思う二人の女性の哀しい物語です。

 みどころは、父を思う錦祥女(きんしょうじょ)と、娘を思う渚の哀しいやりとりです。最後に二人が自害してしまう悲しい結末に、やはり近松作品か、と気づかされるビギナーも多いかもしれません。




 ビギナー的にもとても楽しく感じられる見どころは、愛之助演じる和藤内(わとうない)の「居所変わり(いどころがわり)」です。イヤホンガイドでも「さあここからは大道具さんの腕の見せどころです」と言っていました。舞台の幕があがった状態で、背景の建物が舞台裾に消えていく一方で、橋の上でポーズを取っている和藤内が登場するシーンは、歌舞伎のダイナミックさを感じることができるでしょう。大道具さん、最高でした。ありがとうございました。

 配役は、和藤内に愛之助、錦祥女に扇雀、甘輝に芝翫、老一官に東蔵、そして渚に秀太郎と、とても安定した布陣です。愛之助はよいですね。声も通るし荒事を楽しそうに演じているのがとてもよく伝わってきます。芝翫はこのような、武将役がぴったりですよね。みなさまお疲れ様でした。

 歌舞伎的な要素としては、「元禄見得」「甘輝まげ(かんきまげ)」などが登場します。唐風の舞台も新鮮に感じられることでしょう。思い刀を大勢の家来が扱う場面では、カーリング女子の「そだねー」というセリフが登場するなど、楽しい舞台でした。みなさまありがとうございました。




★★★★☆(2)男女道成寺(1:06-2:00)
 第二幕は、「男女道成寺(めおとどうじょうじ)」です。歌舞伎の世界でよくきく、「道成寺モノ」の一つです。道成寺モノはさまざまなバリエーションがありますので、ビギナーはこれからいろいろと接することでしょう。そういう面から見ても、ぜひ観劇しましょう。ポイントは大きな鐘と、大勢の坊主たち、そして美しい舞踊です。「道成寺といえば、鐘と坊主と踊りね」と覚えておきましょう。

 今回は、「四世中村雀右衛門七回忌追善狂言」ということで、先代雀右衛門の長男、友右衛門が、お芝居の冒頭で立ったままで軽くあいさつをする「口上」がありました。このように先代を大切にする、という歌舞伎界、いや、日本のよい伝統を感じることができる、ここちよい瞬間でした。こういうことを感じさせれくれるところが、歌舞伎の素晴らしいところでしょう。ビギナーにもそういう視点から見ていただきたいところです。




 さて、主役はもちろん白拍子(しろびょうし)役の雀右衛門です。そして、桜子の女形をなんと松緑が演じていました。松緑の女性役はなかなか見られないので、得した気分。といっても、劇中では男が女に化けるという役のため、すぐに立役にもどりましたが。歌昇、壱太郎、竹松、米吉、橋之助と贅沢なお坊さんたち(所化)が勢ぞろいです。いやいや、みなさん、坊主頭が可愛いくて、おもわずニヤリとしてしまいました。壱太郎、米吉の坊主はレアものに違いありません。

 芝居は、長唄と常磐津の心地よい掛け合いの中、雀右衛門と松緑がそろって二人対称で踊り続けます。イヤホンガイドでは「シンメトリックな踊り」とかっこいい説明をしていましたが、欧米のダンスとは違う、日本舞踊の美しさを感じることができるでしょう。「羯鼓(かっこ)の踊り」では、前にシルバーの太鼓を抱えて叩きながら踊っていました。

 ビギナーとして見て楽しいところは、衣装の早変わりでしょう。雀右衛門の変身は見ていて目にも楽しいです。みなさま、すばらしい所作事をありがとうございました。あ、そうだ、途中でお坊さんたち、祝い手ぬぐいを観客に投げていました。さすがに三等席には届かないので、残念。今度は一等席で・・・。




★★★☆☆(3)芝浜革財布 上の巻(2:20-3:04) 下の巻(3:14-3:29)
 さて、昼の部最後の演目は世話物(せわもの)の「芝浜皮財布(しばはまのかわざいふ)」です。これは、落語家、初代三遊亭円朝の「芝浜」を元にした世話狂言という、わかりやすい時代劇です。

 舞台は暗い場面から始まります。いや、暗くてよく見えなかった。しかし、そこで拾った革財布を中心に話が進みます。配役は、主役の魚屋政五郎に芝翫、その妻おたつに孝太郎、ほか、橋之助、福之助、梅花、松之助、橘三郎、松江、彌十郎とベテラン、若手で盛り立てます。




 話はとにかくわかりやすい。これは予習なしでも十分楽しめるお話なので、肩肘張らずに楽しんでいただきたいと思います。主役は芝翫ですが、実は孝太郎が影の主役である芝居とも言えるでしょう。重要な場面で存在感を感じさせないように演じるその力量に関心したお芝居でもありました。

 幕間(まくあい)に10分の休憩がひとつ入るのですが、これはなくてもよいのでは、と思いました。そのまま続けて見終わりたいと思いました。今月は夜の部も短い幕間が設けられているのですが、松竹さん、なにか試しているのでしょうかね。「とにもーかくにもー」(口上でよく聞くセリフ・・・)ありがとうございました。

▼昼の部の報告はこちら

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